藤井聡太五冠に竜王戦第1局で完勝 広瀬章人八段の実像に迫る

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「まさか挑戦者になるとは」

 広瀬は今回、「最近は成績がぱっとせずタイトル戦に出るイメージがなかった。自分より強い人が対策を練って挑んでいるにもかかわらず、(藤井は)全部跳ねのけている。戦って強さを再認識する可能性が高いですね」(ABEMA将棋チャンネル)と語っている。「まさか自分が挑戦者になるとは思わなかった」とも語っていたが、迎える藤井も挑戦者について「予想は外れた」とは吐露した。永瀬を予想していたという。

 広瀬は一昨年11月に長男が誕生し、家事は「何でも来い」のイクメンぶりを家庭では発揮している。長男のためにも負けられない。ファンからも「ミルク代稼がないとね」などのエールが送られる。「子供が保育園に行っている時間がメインの研究時間なので、(コロナなどで)保育園に行けなくなったら大ピンチです」とも語っている。

「欲のない男」といわれる広瀬だが、「藤井さんもいつかは負けるはず。その時の相手が僕だったらいいなあと思います」と控えめながら闘志を見せていた。

 藤井が9月に豊島を退けて王位を防衛したシリーズの一局をABEMAで解説していた広瀬は、竜王戦の話題になり「今度は私があちら側に行くんですね」と照れながらも嬉しそうだった。

 藤井にとって2度目の竜王戦の防衛戦だが、これまで初奪取した5冠、4度の防衛戦で計10度(3連覇を含む)のタイトル戦を一度も負けていない恐るべき強さを見せている。しかも、昨年の王位戦、今年の棋聖戦、王位戦と、いずれも初戦を落としながら、その後、4連勝や3連勝して全て防衛しているのだ。

 その意味では、新調した和服で久々の竜王戦に臨む広瀬が第2局(京都市・仁和寺)で勝利して、初めて「藤井五冠に黄信号」となるのかもしれない。
(一部敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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