藤井聡太五冠に竜王戦第1局で完勝 広瀬章人八段の実像に迫る

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 10月7日、藤井聡太五冠(20)の3連覇がかかる竜王戦七番勝負が、東京都渋谷区のセルリアンタワー能楽堂で始まった。第1局は、久しぶりにタイトル戦に登場した広瀬章人八段(35)が完勝。対局前は「まさか自分が挑戦者になるとは思わなかった」とも語っていた広瀬はどのような人物なのか。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

藤井は「申し訳ない」

 早々に角を交換し、銀を中央に繰り出す「腰掛銀」の戦型。先手の広瀬が先に4筋の歩をついて仕掛け、53手目に「2五」に桂馬を跳ねる攻撃などで中盤も優勢に進めた。

 2日目は広瀬がさらに攻勢に出て優位を拡大。まったく優勢に転じられなかった藤井は、最後に銀と桂馬で反撃して必死に粘ったが逆転ならず。広瀬の「5五角」の王手を見た藤井は、お茶を飲んで投了した。双方とも1分将棋に入ることもなく、2日間の持ち時間(8時間)のうち、広瀬は43分、藤井は12分を残した。

 今回は公開対局。完敗した藤井はファンの前で「本局はきわどい勝負に持ち込むことができずに申し訳なく思っています」と俯いた。そして「早い段階で形勢を損ねてしまったので、将棋の内容をよくしないといけない」などと今後の課題を語っていた。

 藤井は、この竜王位を防衛すれば年度内に史上最年少の6冠も視野に入るが、まずは竜王の防衛からだ。

加藤一二三も絶賛

 一方、勝った広瀬は「全体的には大きく悪い手がなく、まずまず指せた。幸先のいいスタートを切れたので2局目以降も気持ちを切らさずに頑張りたい」などと話していた。中継したABEMAのインタビューでは「悪い局面が無かったと思うので、開幕局としては上出来の内容。想定していた局面になった訳ではないが、自分自身のコンディションを良く整えることができた。直線で勝てればいいんですけど、それだけでは上手くいかないことが多いので、全体のバランスを考えながら指し手を選択していた。(88手目、馬の頭に)飛車を回るのは読み筋で、自分の読みの中ではギリギリ大丈夫と見ていた。その読み筋が正しくてよかった」などと振り返った。

 さらに広瀬は「皆さんも驚いているかと思いますが、私自身もこの勝利に驚いています」と発言すると、視聴者からは「驚いてないよー」「広瀬最強説」などのコメントが寄せられた。

 この一局について、加藤一二三九段(82=引退)は「私のワセダの後輩、広瀬八段の会心の勝利でした。あわてて攻め込まず、ひと呼吸置いて8筋に守備用の銀を備えてから相手陣に攻めかかるとか、意表をついて玉の『顔面受け(引用者註:玉自体が前方からの攻撃を受けること)』をするとか、大胆かつ繊細な指し回しが光りました」と絶賛。しかし「藤井竜王の敗因は分かりません。最後は強硬手段で飛車をタダ捨てしたり、専守防衛の銀を打ったりと手を尽くしましたが、今局に限れば広瀬八段の力が上回っていたと言えましょう」(日刊スポーツ10月8日付「ひふみんEYE」より)と解説した。

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