24年の大河ドラマは紫式部の生涯を描く「光る君へ」 合戦シーンがないので製作費を節約できる?

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 再来年の2024年に放送されるNHK大河ドラマは平安時代の作家で歌人の紫式部の生涯を描く「光る君へ」。吉高由里子(33)が主演する。「合戦シーンがなくて済み、カネがかからないから決まった」と見る向きもあるが、本当なのか。また、どうして紫式部なのか。

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 2024年の大河が紫式部が主人公の「光る君へ」になった理由について、「合戦シーンがなく、制作費が節約できるから」と見る向きもある。だが、NHKのクリエイターセンター(旧制作局)関係者が言下に否定した。

 大河ドラマの制作費は合戦シーンの有無で変わるほど単純なものではないのだ。

 2020年度から今年度の大河の制作費はNHKの公開資料「収支予算と事業計画」で分かる。それを閲覧すると、合戦シーンが厚かった「麒麟がくる」(2020年)と薄かった「青天を衝け」(2021年)の1話当たりの制作費は同じ。再び合戦シーンが厚くなった「鎌倉殿の13人」も一緒。みんな1話当たり7900万円なのである。

「収支予算と事業計画」には具体的な番組名は記されていない。ドラマの制作費が1話当たり1350万円から7900万円と記載されているのみ。だがドラマの中で一番制作費が高いのは大河というのは周知の事実なので、おのずと大河のお値段が分かるのだ。

「ローコストでお得な大河」ではない

 大河の制作費が番組名込みで明かされていた時期もある。

 2004年末、番組制作局のチーフプロデュ―サーが制作費の巨額横領事件で逮捕され、NHK批判が高まっていた2006年度から2008年である。やはり「収支予算と事業計画」に記載されていた。

 それによると、合戦シーンがあった「功名が辻」(2006年)は1話当たり6110万円。合戦シーンが売り物だった「風林火山」(2007年)は同6080万円。合戦シーンがなかった「篤姫」(2008年)は同5910万円。ほとんど変わらないのである。

「光る君へ」には合戦シーンがないものの、紫式部を始めとする登場人物の多くは十二単を身にまとっているから、衣装費が相当嵩むはず。「合戦シーンがないから、ローコストでお得な大河」とはならない。

 一方、合戦シーンを撮る屋外での撮影が減ると、屋内セットのシーンが増えるから、美術費が高くなる。また合戦シーンの有無を問わず、エキストラを除いた出演者の数はほとんど変わらないから、出演料総額に差は出ない。

 今のNHKの出演料は民放より大幅に安いということはない。かつては民放との間に著しい格差があったが、1991年から1997年まで会長を務めた制作畑出身の故・川口幹夫氏が、出演者側に負担がかかり過ぎていると考え、出演料を引き上げた。その後、民放の出演料が頭打ちになっている分、NHKとの格差が縮んでいった。

 民放のプライムタイム(午後7時~同11時)のドラマの制作費は1話当たり3000万円台が相場。中にはTBS「日曜劇場」のようにそれを超えているドラマもあるが、逆に3000万円弱でつくっているものもある。このため、主演者への出演料はせいぜい300万円が限度。

 一方、大河の制作費は民放の2倍以上。出演者の数が多いとはいえ、出演料を極端に安くしなければならない理由はない。

 大河の場合、衣装費も美術費も民放のドラマとは比べものにならない。「ワープステーション江戸」(茨城県つくばみらい市)など撮影場所の使用料、出演陣の移動費もかかる。7900万円が高いと見るか妥当とするかは各視聴者の考え方だろう。

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