不倫相手の“みそ汁事件”で全てがバレて… 夫は東出昌大と同じ心境で人生を終えたのか
そして更なる事件が
そこから井上家は大騒ぎになった。母は娘たちにも父の行状を隠そうとはしなかった。佳穂里さんは当時の様子を次のように話す。
「妹はかなりショックを受けたようですが、私はすでに就職していたし、職場で不倫が話題になることもあったので、父親が不倫していたと知ってもそれについては、誰にでもあり得るだろうなという程度でした。ただ、不倫相手が家に入り込んだのはビックリしましたね。それは相手との信頼関係をきちんと築けなかった父がいけないのではないかと責めました。父は黙って聞いていて、さすがに本当に申し訳ないと家族の前で謝りました」
警察に不法侵入で被害届を出すという母と、それだけは勘弁してくれという父の間で、佳穂里さんは戸惑った。父が不倫相手を思う気持ちが伝わってきたからだ。
「母以外の人を好きにならないで、というような気持ちは私にはなかったから、離婚するならすればいい、ただ、母をあなたの不倫に巻き込まないでと父に言いました。父はその言葉に言葉もでなかった。涙を浮かべていましたね。父の涙は初めて見ました」
そのとき、勇蔵さんはどんな思いだったのだろうか。
「暁美がそんなことをするなんて、信じられませんでした。その日、暁美は代休でした。関係は落ち着いていたし、前日もごく普通に仕事をしていた。帰りにふたりで軽く一杯やりましたが、妙なところはありませんでした。家族には本当に申し訳ないと思った。暁美と話しあわなければと連絡をとろうとしたんですが、とれなかった。翌日も暁美は会社を休んでいました」
そしてさらに翌日、今度は暁美さんの夫と名乗る人物が、夜遅く訪ねてきた。
「僕が玄関に出ると、大柄な男が『あんたが井上か』と。けんか腰でしたね。よくも暁美を寝取ってくれたな、と。『いきなり人の家に来てなんですか、下品すぎる』と思わずつぶやいたら、バコーンと顔に衝撃が走った。殴られたんです。妻が警察を呼び、大騒ぎになりました」
近所の人が見守る中、男はパトカーで連行されていった。
「もう無理、と妻が言いました。僕にどこかに行ってほしい、と。それからしばらく、僕は会社近くのビジネスホテルに住んでいました。弁護士をたてて暁美側とも話し合いました。結局、暴力沙汰は不問に付すことにし、暁美とは別れることで話がついたんです。僕は会社を辞めて、田舎に引っ込みました」
最初は音のしない世界が怖くてたまらなかったという。特に夜中は静かすぎた。生きているのもつらかった。
「外は真っ暗。たまに風が吹いて木々がざわめく。東京に生まれた僕にとっては、完全に異世界でした。妻とは離婚はしていませんが、まったく連絡は来ない。娘たちにも合わせる顔がない」
そんな中で彼を慰めてくれたのは、近所の人からもらった子猫だった。「自分が死んだらコイツも生きていけない。そう思うと生きるしかなかった」と振り返った。
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