健康長寿のカギは「選択」にあり 「生活習慣改善法」と医療の新常識「SDM」を専門家が解説
日々の選択が健康寿命を決める
そして動脈硬化をもたらす糖尿病や高血圧といった生活習慣病は、日常生活のあらゆる局面での「選択」の積み重ねによって引き起こされます。したがって、人生100年時代を健康に全うするには、「適切な選択の積み重ね」が鍵になってくる。高齢者が健康な状態で自立していれば「高齢化社会」という言葉もネガティブなものでなくなるかもしれません。日々の生活習慣、すなわち「選択」が私たちの健康長寿を決めているのです。
翻って、私たちは今、「適切な選択」ができているでしょうか――。
生活習慣病の持つ「重み」
〈こう問い掛けるのは、聖路加国際病院・心血管センター循環器内科の浅野拓医師だ。
浅野医師は、動脈硬化によって心臓の冠動脈が詰まってしまう虚血性心疾患や心臓の弁に問題がある弁膜症の治療を中心に行い、これまで500人以上のカテーテル治療にあたってきた。健康診断でコレステロール値が高いと指摘された人、心筋梗塞、場合によっては心肺停止を起こして救急車で運ばれた人等々、さまざまな状態の患者を診てきた経験を持つ。
その過程で、「健康のキー」は何かと考えるうちに、改めて生活習慣病の持つ「重み」に着目した。そして、そこから浮かび上がってきたのが「選択」の重要性だった。〉
「人生は選択の連続である」(シェイクスピア作「ハムレット」)
そうである以上、人生を支える健康もまた選択の積み重ねの結果に他ならないはずです。
駅で電車を降りて階段を使うのかエスカレーターに乗るのか。食事は肉をメインにするのか魚を多く取るのか。そうした小さな選択の集積が習慣となり、それが生活習慣病として表れ、そしてその生活習慣病が脳梗塞やアルツハイマー病のようなより大きな病を招く。そう考え、私は現在、「健康に寄与する日々の選択」に関する論考を深めているところです。しかし、これが一筋縄ではいかない。
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