津山・9歳女児殺害事件 無期懲役判決の決め手は、勝田被告が「『TVのチカラ』を観て創作」と語った「自白」の迫真性

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実際に「TVのチカラ」を観てみると

 ここまで「TVのチカラ」という言葉が頻出する一審を傍聴すれば、この目で確かめたくなるのが人情である。筆者は「週刊新潮」の名物コーナーである「週刊新潮掲示板」で、番組の録画を所有している方がいないか呼びかけたところ、幸いにも当時の映像を入手することができた。

 実際に内容を確認すると、たしかに勝田被告が述べたように、事件のあった被害者の自宅や、その周辺で撮影されている再現VTRには、Aさんの下校の様子や自宅で被害に遭うまでの状況が収められていた。しかしその一方で、勝田被告の“ストーリー”であるはずの当時の証言に、再現VTRには存在しない情報が散見されたことも確認できた。

 そのひとつが、有罪認定の大きな根拠となった殺害の状況である。犯行を認めていたときの勝田被告は、取り調べに対してAさんを殺害したときの様子をこう語っていた。

「首を絞めて揉み合いになり、仰向けに倒れたとき、Aさんの左側でAさんの首を右手で締めながら、カバンからナイフを取り出し、左手の親指のそばから刃が出るように刃物を持った状態で、Aさんの腹を1回刺した。Aさんの顔が土気色になり、怖くてパニックになり、首から手を離して、ナイフを右手に持ち替え、胸を連続で3回刺した」

「TVのチカラ」の再現VTRには、ここまで詳細なシーンは存在しない。再現VTRに登場する“犯人”は、いきなり包丁でAさんに襲いかかっており、首を絞めた描写はなかった。勝田被告は「左手で1回、右手で3回刺したことにした理由は、特にありません」と、この部分が元ネタに頼らないオリジナルのストーリーであると、一審で証言していた。が、勝田被告の供述は、奇妙なことにAさんの遺体の状態と一致していたのだった。Aさんには首を絞められた痕跡のほか、胸や腹に4つの刺傷があり、これは「短期間のうちに相次いで形成された」ものだと法医学医が一審で証言している。そして、4つの刺傷のうち1つは、他の3つと傷口の向きと場所が異なっていた。

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