津山・9歳女児殺害事件 無期懲役判決の決め手は、勝田被告が「『TVのチカラ』を観て創作」と語った「自白」の迫真性

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“自白”の内容は「自分で作り上げたストーリー」

 紆余曲折がありながらも、一審の公判で勝田被告は「事件当時に津山市には行っていない」と、事件との関連を完全に否定。取り調べ時の犯行を認めた供述内容は「自分で作り上げたストーリー」だったと主張するようになった。

 この「ストーリー」について勝田被告は一審で、かつて何度か津山市を訪れたときの記憶に、複数の“元ネタ”をつけ加えて作り出したと述べた。元ネタには「津山女児殺害事件」とネット検索して得た情報、当時目にした新聞記事、そして、未解決事件の情報提供を生放送で呼びかけるテレビ番組「奇跡の扉 TVのチカラ」(テレ朝系)を挙げている。

 一審の被告人質問では、「TVのチカラ」の番組名が頻繁に飛び交っていた。

裁判官:「あなたが認めていたときの証言で『Aさんの後をつけている途中にハイツがあった』とありますが、これは何をもとにしたんですか?」

勝田被告:「『TVのチカラ』です! 番組では被害者役の女の子がハイツの横道を歩いて下校しているシーンがあり、ハイツは映っていないが、その道だとわかりました」

 勝田被告は自ら録画していたという「TVのチカラ」を2005年まで繰り返し視聴していたとも法廷で語っている。とはいえ、逮捕は2018年。10年以上前に放送された番組の内容を鮮明に覚えているものだろうか。一審ではこれについて裁判員からも疑問が呈された。

裁判員:「2005年から事件で取り調べを受けるまで、だいぶ経っていると思うんですが、どうして覚えていたんですか?」

勝田被告:「特に印象に残ったシーンだけ覚えていました。すべて覚えているわけではありません。たとえば、被害者役の女の子が後ろから首を絞められているシーンや、友人と別れて1人で下校していたシーン、被害者役の女の子が事件の起こった部屋で倒れていたことも覚えています」

「行ったことがない」というAさん宅の間取りを把握していたのも、「TVのチカラ」から得た情報だったと勝田被告は力説した。

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