「学生の自分にも徴兵令状」「出国がうまくいくか…」 市民の戦争動員、ロシア国民の本音を調査
赤紙一枚で戦地に赴き、未来ある命を落とした人たち。二度と繰り返してはならぬ私たちの負の歴史だが、21世紀の今日、それが現実になっている国がある。独裁者の独りよがりで戦地に送られかねない人とその家族はどんな思いか。ロシア人の本音を拾った。
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それは多くのロシア国民にとって、ウクライナ戦争が人ごとでなくなった瞬間だったといえよう。新聞やニュース番組は「予備役30万人動員」と伝えたが、要は、30万人に「赤紙」が届くということである。
「プーチン大統領は2月24日の時点で、職業軍人しか動員しないと明言していました。ところが今回、“部分的”という文言を強調しながらも、第2次大戦後、初めて市民から予備兵を召集しました。抗議デモの取り締まりを見ても、大統領に相当の焦りがあるのは間違いなく、一方のロシア国民は、2月の発言との矛盾をネットで語り合い、パニックに陥っています」
元産経新聞モスクワ支局長で、大和大学教授の佐々木正明氏の説明である。
モスクワで映像制作に携わる男性(36)は、
「これまで戦争について家族や友人と話すことはほとんどありませんでした」
と語る。傍観者でいることができたからだが、
「今後は自分たちの身に降りかかるので、話す機会は増えると思います」
むろん、モスクワの研究所でエンジニアを務める男性(34)のように、動員令は「コロナウイルスのようなものだと思う」と達観する人もいるが、それはそれで深い諦念が感じられる。
動員令が出た日に航空券を購入
本誌(「週刊新潮」)はロシア国民約30人に取材やアンケートを試みたがモスクワの保険会社勤務の男性(24)は、すでに行動を起こしていて、
「動員令が出た日にカザフスタンに行く航空券を買いました。しかし、国境が閉じられないかどうか不安です。また、召集令状は手渡しが原則なので、誰も家に入れないようにドアを閉め切っています」
ロシア在住の日本人が、
「ビザなしで行ける国への飛行機に人が殺到し、ジョージアやカザフスタンへの陸路国境にも長い列ができています」
と話すように、同様に行動する人は多い。だから実際プーチン政権は予備役の男性を出国禁止にするようだが、海外に逃げたいのも当然だというほかない。
「対象外だとされた人も次々と召集令状を受けとっていて、メディカルチェックや訓練も不十分なまま前線に送られる、との情報もあり、社会全体に動揺が広がっています」(同)
ショイグ国防相は「軍務経験者が対象」と説明したが、守られていないというのである。理系大学の修士課程に在籍する、モスクワ在住の24歳の男性が語る。
「学生は徴兵されないという話なのに令状が来ました。学業と並行して働いている会社が軍事分野の製品も作っていて、会社の証明書を徴兵事務所に持参して事なきを得ましたが」
軍での勤務経験がある66歳の女性が言うには、
「今回の部分動員令が本当に軍務経験者だけなら、息子は該当しませんが、私は勤務していたからわかるけど、軍が言うことはコロコロ変わる。息子には絶対行ってほしくない」
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