阪神も続けるか…クライマックスシリーズ、球史に残る“下克上”はこうして起きた

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史上初の“サヨナラ引き分け”

 この両チームに次ぐ下克上をはたしたのが、2014年の阪神だ。

 リーグ3連覇の巨人に7ゲーム差の2位に終わった阪神は、ファーストステージの広島戦第1戦は、福留孝介の一発で挙げた“虎の子”の1点をメッセンジャー、呉昇桓の継投で守り切り、1対0で先勝。第2戦も能見篤史、呉、福原忍が失点を許さず、延長12回0対0、史上初の“サヨナラ引き分け”で、巨人との頂上決戦に駒を進めた。

 そして、下馬評では巨人有利だったファイナルステージでは、広島戦2試合で1得点の貧打だった猛虎打線が、ゴメス、マートンの両助っ人の復調でパワーアップ。好調の投手陣と歯車がかみ合い、第1戦から3連勝と乗りに乗った。

 王手をかけた第4戦も、初回にマートンの3ランと福留のソロで一挙4点を先制すると、最後まで試合の主導権を握り、8対4と快勝。気迫の4タテで9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。

 シーズン終盤には去就が取り沙汰されるなど、退任危機から一転奇跡の下克上を成し遂げた和田豊監督は「ここに来るまでいろいろあったから、いろいろな物が詰まったCS優勝だと思う」と感無量の面持ちだった。

 今季の阪神も、開幕9連敗を手始めに、最大借金「16」、夏場の大失速などの悪夢を経て、優勝したヤクルトに12ゲーム差の68勝71敗4分と負け越しながらも、幸運にも3位でCSに進出した。ここからロッテを上回る「史上最大の下克上」を実現し、矢野耀大監督の“ラスト采配”に花を添えることができるだろうか。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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