阪神も続けるか…クライマックスシリーズ、球史に残る“下克上”はこうして起きた

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 10月8日からいよいよクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージが開幕した。レギュラーシーズンで2位、3位のチームでも、流れを掴んで短期決戦を勝ち抜けば、日本シリーズの挑戦権を得られるCSでは、過去にも下位のチームが上位に取って代わる“下克上”が何度か演じられた。球史に残るCSでの大逆転劇を振り返ってみたい。【久保田龍雄/ライター】

リーグ3位から日本一

“史上最大の下克上”と今でも語り草になっているのが、2010年のロッテである。

 同年のパ・リーグは、ソフトバンクと西武がゲーム差なしで並び、勝率わずか2厘差でソフトバンクが7年ぶりV。一方、日本ハムと“最後のイス”を争っていたロッテは、9月27日の時点で首位・ソフトバンクに4ゲーム差の4位という苦しい状況から、残り3試合に全勝し、日本ハムに0.5ゲーム差でギリギリ3位に滑り込んだ。

 西武とのファーストステージも苦闘の連続だった。第1戦は0対1の8回に西岡剛のソロで追いついた直後、守備の乱れなどから4点を奪われ、勝負あったかに思われた。だが、9回に5安打で再び同点とすると、延長11回に福浦和也の決勝ソロが飛び出し、6対5で逃げ切った。

 翌日の第2戦も、初回にいきなり3点を失うも、小刻みに反撃し、3対4の9回に里崎智也が起死回生の同点ソロ。延長11回2死一、二塁、井口資仁が中前に決勝タイムリーを放ち、驚異の粘り腰でファイナルステージへの進出を決めた。

 ソフトバンクとのファイナルステージも、第1戦に先勝したあと、2連敗。アドバンテージも含めて1勝3敗と崖っぷちに追い込まれた。だが、西村徳文監督は「もう負けたら終わりという状況は、シーズン終盤と同じ。選手を信じるだけ」と“和の力”にすべてを託し、第5戦で0対1の7回に鮮やかな逆転劇を演じるなど、奇跡の3連勝を実現。史上初のレギュラーシーズン3位のチームが日本シリーズ進出という快挙を達成した。

 そして、日本シリーズでもセ・リーグの覇者・中日を4勝2敗1分で下し、これまた史上初のリーグ3位から堂々の日本一に輝いている。

「神様がこの栄光へと導いてくれた」

 ロッテ同様、レギュラーシーズンは3位、CSもファーストステージで敗退寸前から、“怒涛の大逆襲”で勝ち上がったのが、17年のDeNAである。

 シーズンでは優勝した広島に14.5ゲーム差の3位。2位・阪神とのファーストステージも、第1戦で0対2と完封負けし、あとがなくなった。

 さらに、翌10月15日の甲子園は雨。もし中止になれば、DeNAが第2戦に勝っても、日程の都合で1勝1敗のまま打ち切りとなり、上位チームの阪神がCS史上初の“不戦勝”でファイナルステージに進出するはずだった。

 ところが、悪天候にもかかわらず、“営業優先”で第2戦が強行されたことが、DeNAに大きな恵みをもたらす。土砂降りの雨のなか、4対4の7回に筒香嘉智のタイムリーで勝ち越すと、乙坂智の左越え3ランなどで一挙6得点。9回にも3本のタイムリーでダメを押し、逆王手をかけた。

 雨天中止を挟んで10月17日に行われた第3戦では、ウィーランドが7回1失点、打線もロペスの3ランなど、投打がガッチリかみ合い、6対1と快勝。球団史上初のファイナル進出を決めた。

 その余韻も覚めやらぬ翌18日に行われた広島とのファイナルシリーズ第1戦は、0対0の5回に菊池涼介のタイムリーなどで3点を失い、そのまま降雨コールドでゲームセット。今度は雨に泣く形となった。しかし、第2戦は6対2、第3戦は1対0とDeNAが雪辱を果たす。

 そして、2日連続で雨天中止となり、23日に行われた第4戦。初回に3点を先行されたDeNAが4対3で逆転勝ちを収めると、シリーズの流れは決定的になった。第5戦は5本塁打を含む16安打と、DeNA打線が爆発し、9対3と圧勝。鮮やかな4連勝でファイナルステージを制した。

 打つ手打つ手がピタリと当たり、チームを日本シリーズに導いたラミレス監督は「神様がこの栄光へと導いてくれた。僕は決断しただけ。実際にやったのは選手です」と14.5ゲーム差からの大逆転劇を振り返った。

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