スティーブ・ジョブズが愛した京都「俵屋旅館」 部屋係が残したメモの中身「旦那様、筍大好き、あわふ田楽はまったくダメ」

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〈旦那様、筍大好き〉

 ジョブズ部屋係の「几帳面な記録」のなかでも、とりわけ詳細を記しているのが、夫人と子息と3人で過ごした2004年3月28日からの6連泊に関するものだ。部屋は特別室の暁翠庵(ぎょうすいあん)。メモの詳細を見ていこう。

〈ジョブズ様 御嗜好
 お好きな食べ物/筍(特に煮た物)、お漬物、フルーツ、おかき類・お煎餅、和菓子類、湯波、野菜スープ。
 お嫌いな食べ物/芋類、揚げ物、バターを使った洋菓子類。
◎旦那様、本格的なベジタリアン。
◎常に必要なお飲物→オレンジジュース、又はネーブルジュース。
◎アルコール類はお飲みになりません。〉

 加えて、ノートの隅に〈*オレンジジュース、3人分(1回につき)。1リットル=オレンジ20個分〉とあるから、日にオレンジ20個分ものジュースを飲んだのだろう。何事も過剰なジョブズらしい食傾向である。

 佐藤社長によれば、「野菜スープは普段うちの献立にはないので、おそらく板長が特別にこしらえたのでしょう。お煎餅は、少し甘い御池(おいけ)煎餅を好まれたようです」

 滞在中の夕食献立は次のとおり。

〈3月28日
 先附
 お造り こんにゃく
 煮物 湯波茶巾
 焼物 あわふ田楽
 温物 筍土佐煮、ひろうす
 お漬物
 水物 いちご
 生野菜(サラダ4人前)
 温野菜(ポテト、スナックえんどう)
 オレンジジュース(大)〉

 付記に〈本日、すごくお疲れですぐにお休みしたいとおっしゃり、あまり食されませんでした〉〈筍、大好き〉〈あわふ田楽はまったくダメ〉とあり。

〈3月29日
 先附 とうもろこし、えんどう豆、ゆりねのかき揚げ、たらの芽
 煮物 豆腐(厚揚げ)、ずいき、菜の花
 焼物 筍の木の芽焼、ふきのとう
 温物 えびいものオランダ煮、きく菜
 強肴(しいざかな) 蒸し寿し
 水物 メロン、みかん
 サラダ(たまねぎ、にんじん、レタス、アボカド)〉

 付記に〈サラダは、スライス以外は断られます。必ずこまかいスライスで!〉〈にんじん、アボカド、多めに召し上がります。3回ほどおかわりされました〉とあり。

〈3月30日
 夕食は外で。「なかむら」に行かれました。〉

「なかむら」は富小路御池(とみのこうじおいけ)にある日本料理店。若狭の甘鯛(ぐじ)料理で知られる名店だ。夜のコース料理は3万円(税・サービス料別)。家族3人で9万円強。さすがジョブズである。

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