「五輪汚職事件」 旧皇族「竹田恒和」JOC前会長に迫る特捜部 実は「被疑者聴取」で資金受領の疑いが浮上

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 東京五輪パラリンピックを巡る汚職事件で、日本オリンピック委員会(JOC)前会長の竹田恒和氏(74)の周辺が騒がしくなっている。事件では、竹田氏と「昵懇の仲」とされる大会組織委員会元理事・高橋治之容疑者(78)が、大会スポンサー企業や大手広告代理店から計1億4000万円超の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部に受託収賄容疑で逮捕・再逮捕されている。実はその裏で、竹田氏にも不透明な資金提供を受けた疑いが浮上。特捜部から「被疑者聴取」を受けているというのだ。

自宅に連日報道陣が殺到

 東京都港区の竹田氏の自宅マンション。9月下旬から連日、テレビクルーや記者ら報道陣が殺到し、夕方近くまで張り込みを続けている。大手新聞社の記者によると、特捜部が竹田氏側への強制捜査に踏み切り、自宅を捜索するのではないかと警戒しているようだ。10月4日も20人近い報道陣が詰めかけ、周辺住民がいぶかる様子がうかがえた。

 こうした状況が生まれている理由について、ある大手新聞社デスクは、

「竹田氏は9月になってから特捜部の任意聴取を複数回受けている。当初は、高橋容疑者の受託収賄事件を巡り、大会組織委員会元理事としての職務権限などを確認するための単なる『参考人聴取』とみられていた。しかし、これが黙秘権を告知された上での完全な取り調べである『被疑者聴取』だったことが判明した。このため、実際に竹田氏が立件されるかが注目されている」

 と解説する。

 たしかに、大手新聞社やテレビ各社は9月中旬、「特捜部が竹田前会長を参考人聴取」などと相次いで報じているが、特捜部は当初から竹田氏を“被疑者”として聴取し、立件を視野に捜査を進めているというわけだ。ある民放テレビ記者は「高橋容疑者という電通OBでもあるスポーツビジネス界の大物を摘発し、五輪の闇を暴いたともいえる特捜部だが、最終目標は政治家か竹田氏の立件だろう。新たな竹田氏への『裏金ルート』も浮上し、特捜部は解明に躍起になっている」と明かす。

ぬいぐるみルート

 新たな裏金ルート――。

 まず、これまでの事件の構図を簡単に振り返ると、高橋容疑者は8月以降、多額の賄賂を受け取ったとして受託収賄容疑で3度逮捕された。まずは大会スポンサーの紳士服大手「AOKIホールディングス」側から5100万円、続いて同じく大会スポンサーの出版大手「KADOKAWA」側から約7600万円、さらにはスポンサー募集業務を担っていた大手広告会社「大広」から約1500万円を賄賂として授受。見返りに便宜を図ったとされている。これら3ルートの事件には、竹田氏は何も関わっていないとみられる。

 だが、この3ルート以外で、竹田氏の関与が疑われるとして特捜部が最も重視しているのが、新たに浮上した「ぬいぐるみルート」だ。大会マスコットの「ミライトワ」と「ソメイティ」のぬいぐるみを製造・販売した老舗玩具製造会社「サン・アロー」は、高橋容疑者に理事としての便宜を依頼し、その謝礼として約800万円を提供した疑いが出ている。特捜部はこの800万円のうち一部資金が竹田氏側に流れたとみており、「被疑者聴取」により、竹田氏から複数回にわたり事情を聞いている。

 特捜部の調べに対し、高橋容疑者は「竹田氏をねぎらうために金を集めた」と供述する一方、「実際に竹田氏には渡していない」とも説明。竹田氏も「身に覚えはない」などと資金の受領を否定しているという。

 ただ、国際オリンピック委員(IOC)の委員も務め、JOC会長として長年にわたり君臨し、「日本オリンピックの顔」とも評された竹田氏だ。それほどの大物に対し、特捜部が証拠もない中で被疑者聴取をするというのは不自然だろう。

 ある検察関係者は「特捜部は、事件の立証上で重要な証拠を任意の調べ段階で被疑者にあてるようなことはしない。まずは自供させ、それを補完する形で証拠を使うのが捜査の王道だ」と明かし、〈隠し玉〉の重要な証拠を握っていることを臭わせる。高橋容疑者やその周辺から、竹田氏に不透明な資金が流れたことを裏付ける口座記録などを入手している可能性も考えられる。

ヤメ検に相談

 さらに、受領を否定している竹田氏だが、自身が立件されることに危機感は持っているとみられ、すでに「ヤメ検」に弁護を依頼。任意聴取にどう対応すればいいかなど細かく相談しているというのだ。しかも、このヤメ検は、単なる元検事の弁護士というわけではなく、過去に東京地検特捜部に長年在籍した経験を持ち、特捜部の手の内を十分に理解している弁護士といい、竹田氏側の緊張感も伝わってくる。

 一連の事件を巡っては、組織委元会長の森喜朗元首相が、最初に立件されたAOKI側から200万円を受領したとの報道も出ているが、この200万円は病気療養中だった森氏へのお見舞い名目で、金額の低さなどからも、特捜部は立件する可能性は薄いという。他にも名前が挙がっている政治家はいるが、証拠や職務権限との兼ね合いから、やはり特捜部は立件に消極的だ。

 特捜部は、AOKIルートやKADOKAWAルートで次々と関係者を立件し、元理事とスポンサー企業との癒着を暴き、10月4日にはKADOKAWA会長の角川歴彦容疑者(79)という出版界の大物も贈賄罪で起訴した。だが、政治家の立件もなく捜査が終了すれば、世間からは「期待外れ」との批判は免れない。特捜部には、日本オリンピックの顔だった竹田氏の不透明な資金受領疑惑の徹底解明が求められるだろう。

デイリー新潮編集部

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