「ソフトバンク」現役社員がTKO木本をハメた社長とグルになって“投資詐欺”をしていた 会社は取材後「警察に通報した」と回答
「ソフトバンクが払うから大丈夫」
疑問点は他にもある。本来、副業とは、従業員が生計の足しにするなどの目的で会社の業務以外の仕事をすること。会社の下請けを従業員が副業として引き受けるのは変な話だ。しかも、B部長の会社は出資を募らなければ事業を受注できない会社だという。
「T社が受注するにあたり、15〜18億円程度のサーバー費用や下請けベンダーへのコンサル費用がかかるとの説明でした」
そんな下請けに頼むことで、5%もの「高配当」をソフトバンクは出資者に支払わされるのだ。あまりに荒唐無稽な話だが、
「これまでにT社がソフトバンクから受注した実績や自身の著書を見せながら、B部長は自信満々に説明するのです。リスクはないんですかとも聞きましたが、『あるとしたら天災による遅延やシステムを動かした時にバグが出ることくらい。それもほぼないですよ』と。そして、『ソフトバンクが最終的なお金を支払うわけですから大丈夫』と言うのです」
連絡は「Signalを使って」
確かに、そこは紛れもなくソフトバンク本社の会議室であった。目の前でモニターを使って説明するのは現役の社員二人だ。著書の話も本当で、B部長はC課長と共著でプログラミング関連の本をソフトバンク関連会社から出版していた。話を信じてしまったAさんの気持ちもわからなくもない。
だが、今になって振り返れば他にも怪しい点はあったという。
「会う前から『秘密保持契約書』に必ずサインが必要ですとXを通してしつこく言われており、当日もそれにサインさせられました。さらに、『情報漏えいを防ぐために今後の連絡はSignalにして欲しい』と言われました。実際、その後、数回にわたってB部長とやり取りが続いたのですがすべてSignalを使わされました」
SignalとはLINEのようなオープンソースのメッセンジャーアプリである。LINEとの最大の違いは、メッセージが自動的に消える機能がついている点で、証拠のやり取りを残さない目的で薬物の売買などに使われることも多い。
商取引において大事なのは、後々言った言わないで揉めないようにやり取りを証拠にして残すことなのに跡形なく消すというのだから、これまたおかしな話だ。だが、完全に信じ込んでしまっていたAさんは、最終的にはこの案件に3900万円もの大金をつぎ込んでしまったのである。
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