アメリカとロシアは泥仕合…誰がノルドストリームを破壊したのか

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事故の原因、別に?

 このように、米ロの「泥仕合」は激しくなるばかりだが、「今回の事故の原因は別にあるのではないか」と筆者は考えている。

 注目しているのは「バルト海の海底ガスパイプライン」だ。

 このパイプラインの目的はノルウェーで産出される天然ガスをデンマークを経由してポーランド北部に輸送することだ。パイプラインの完成によりノルウェー産ガスの欧州向け供給量が増加することはないが、仕向地であるポーランドにとっては死活的に重要だ。

 ポーランドは天然ガスの国内需要の3分の2をロシアに依存していたが、今年4月からロシアからのガス輸入が停止していた。窮地に立たされたポーランドだが、パイプライン完成で年間消費量の15%に相当するガスをノルウェーから確保できることになる。

 パイプラインは2020年後半から建設がスタートしたが、ガス漏れ事故が発覚した9月27日に早くも工事が完成している(10月1日からガス供給を開始)。

 気になるのはこのパイプラインが今回ガス漏れの発生した地域付近でノルドストリームと交差していることだ。突貫工事は不慮の事故を生みやすい。パイプライン建設企業がノルドストリームのパイプラインに大きな傷をつけてしまった可能性は排除できない。

 ロシアが「問題解決には当事者間の対話や迅速な意思疎通が必要だが、こうした営みはまったく行われていない」と指摘しているように、西側諸国は事故調査をロシアと協力して実施する意向はないようだ。原因究明はあらゆる可能性を想定して行わなければならないが、このままでは「最初から結論ありき」の報告書が出てくるのがオチだ。不毛な対立が残るだけで、真相は永遠に不明のままになってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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