巨人1位指名の高松商「浅野翔吾」の評価…“目玉不在”のドラフト戦線でサプライズはあるのか?

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「巨漢スラッガー」

 また、社会人では、投手の吉村貢司郎(東芝)、益田武尚(東京ガス)の評価が高いが、一昨年の栗林良吏(広島)と比べるとそこまでの安定感は感じられない。このあたりのいわゆる「即戦力候補」に本命と言えるだけの選手がいないことが、冒頭でも触れた“目玉不在”という印象に繋がっていると言えそうだ。

 絶対的な即戦力候補がいないとなると、思い切って将来性に振り切る球団が出てくることも十分に考えられる。そうなると浮上してくるのは、高校生ではないだろうか。

 浅野にはない身体的なスケールと、ポジション的な面で評価を上げそうな選手が内藤鵬(日本航空石川・三塁手)と松尾汐恩(大阪桐蔭・捕手)の2人だ。内藤は身長180cm、体重100kgの「巨漢スラッガー」で、甲子園出場こそないが、下級生の頃から注目を集めている。

 また、松尾は大阪桐蔭で2年時からレギュラーを務め、甲子園通算5本塁打を放っている強打のキャッチャー。U18W杯でベストナインを受賞するなど、大舞台での実績は十分だ。

 北信越地区担当スカウトは、内藤について、以下のように分析している。

「飛ばす力は内藤が一番じゃないですかね。とにかくスイングが柔らかくて、軽く振っているようでも凄い飛距離が出ます。足は速くないですが、肩は高校生としては十分強いですし、サードの守備も年々良くなっている。1年生から4番を打っていても、本人には奢るようなところがなくて、練習も熱心ですよね。(エリアの)担当スカウトは自分が担当したいと思っている人は多いのではないでしょうか。右のパワーヒッターはどこも欲しいですから、どこも評価は高いと思いますよ」

高校生への期待感

 一方、近畿地区担当スカウトは、松尾について、次のような高い評価を与えている。

「松尾は、キャッチャーの守備が去年から大きく成長しましたよね。元々ピッチャーとショートで、高校からキャッチャーになったので、細かいことを言えば、いろいろと課題がありますけど、肩の強さとフットワークは素晴らしいと思います。バッティングは少し引っ張りが目立ちますが、徐々にヒットにできるゾーンが広がってきました。キャッチャーがもしダメでも、内野で勝負できる実力を持っています」

 その他の野手では、大型ショートのイヒネ・イツア(誉)や右の強打者タイプの内田湘大(利根商)も評価が高い。一方の投手では、斉藤優汰(苫小牧中央)、門別啓人(東海大札幌)、安西叶翔(常葉大菊川)が春から夏にかけて大きく評価を上げている。近年高校卒の投手が早く一軍の戦力となっていることも、彼らにとって追い風となりそうだ。

 昨年、事前の報道では1位候補と見られていなかった松川虎生(ロッテ)が入札されて話題となり、1年目から一軍で大きな戦力となった。また、一昨年は佐藤輝明を外したソフトバンクは井上朋也、オリックスは山下舜平大と高校生に切り替えている。そういったことを考えると、ここで挙げた高校生が浮上してくることも十分に考えられるだろう。

 運命の日まであと約2週間あまり。ここから各球団でどんな駆け引きが行われるのか。最後までその動向に注目してもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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