創業120年を迎えた「木下サーカス」の今 移動費用は1回3000万円、コロナ禍でも退職者ゼロの経営術

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象の病院

 木下サーカスは、空中ブランコだけではなく、世界ナンバーワンと言われる猛獣ショーも有名だ。

「現在、ライオン2頭、ホワイトライオン3頭、シマウマ2頭、象2頭でショーを行っています。ワシントン条約で1987年から象の売買が禁止になりました。そのためタイ政府と象のレンタル契約を交わしています」

 1999年、木下サーカスはタイのランパンに象の病院「キノシタ・エレファント・ホスピタル」を開設した。ミャンマーとの国境で地雷を踏んだ象の治療をするためだという。

「時代の流れで、最近、サーカスも動物虐待が問題視されています。世界一の観客動員数を誇り、象のショーが目玉だったアメリカのリングリングサーカスは、動物愛護団体から訴えられました。裁判では勝訴したのですが、象のショーをやめてしまったため廃業に追い込まれてしまったのです」

 新型コロナは、サーカス界にも大きなダメージを与えた。日本でも人気の高かったカナダの「シルク・ドゥ・ソレイユ」は、新型コロナの影響で2020年6月、経営破綻。経営者が代わって2021年に再スタートした。

「創業者のギー・ラリベルティは、後継者を育てていませんでした。うちも新型コロナの影響で、2020年2月末から公演中止となりました。再開したのはその年の8月です。年間120万人だった動員数も半減しています。クラウドファンディングで3000万円集まったこともあり、コロナ禍でも退職者は1人も出していません」

 木下サーカスの団員は公演中、コンテナハウスで生活する。

「1つのコンテナハウスに1家族が居住します。独身者だと、コンテナハウスに3人が居住しています。公演で移動するときは、トラック約100台でコンテナハウスやテント、動物などを輸送するので、1回の費用は3000万円ほどかかります」

 木下サーカスはなぜ、120年も存続できたのか。

「うちが生き残ったのは、常に進化を続けているからでしょう。年配の方が昔、子ども時代に見たサーカスとはまったく異なりますよ。素晴らしい音響と照明で、老若男女が楽しめるファミリーエンターテインメントになっています。人形浄瑠璃や歌舞伎でも演じられる『葛の葉』も演目に入っており、日本の秘芸もとり入れていますからね」

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