「私は夫の部下ではない」 定年退職した夫との会話を拒否する妻の“本当”の心情とは

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「今後は何も話をしない」と言ってきた妻

 家族問題評論家の池内ひろ美氏は1996年に「東京家族ラボ」を開設して以来、4万件近い家族問題の相談に乗ってきた。離婚、結婚、恋愛、不仲等々。今回池内さんのもとを訪れたのは、長年連れ添った妻に突如「今後は何も話をしない」と言われた夫である。一体、妻の本音とはどのようなものなのか――。【SNS時代の家族問題/第5回】

(個人が特定されないように年齢など一部を変えています)

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「さて、どうしたものですかね」

 背筋を伸ばして椅子に腰掛け、すぐに大きく腕を組み、大きなため息をつきながら、その男性は落ち着いた声で話しはじめます。

 サマースーツの襟に少しかかる程度の白髪交じりの長めの髪の毛をオールバック気味にきれいにとかしつけている。

「うちの家内がね、先月定年退職した私と、もう今後は何も話をしないと伝えてきたんです」

 夫と話をしたくない妻というのは、じつは想像以上に多いものだが、わざわざ宣言するとは、いったい何があったというのでしょう。

「何かがあったわけでは、ないんですけどね」

熟年離婚の兆し?

 今までにも、奥様が話をしないと言ってきたことはありますか?

「いや、ありません。家内はもともと明るい性格で、子供たちにはたくさん話していたし、とても良い母でしたし、コミュニケーションスキルも高いからご近所づきあいもトラブルなく行っています。料理のスキルはあまり高くはありませんが、まあ、私は食事にこだわりはないので構いません。料理教室に通え、お金は出してやると言ったのに通わなかったから、今でも料理スキルは低いままですが、それ以上は責めていません」

 奥様は、長男が結婚して新居を持ち、長女が就職して一人暮らしを始めた頃から、口数が減ってきたという。つまり、子供たちに対してはたくさん話してきたが、夫と話すことがないのだろうか。これは熟年離婚の兆しでもあるため、念のため尋ねてみる。

 奥様は離婚を考えているふしがあるのでしょうか。

「いや、ありません。専業主婦の妻は離婚しても収入がありませんし、実家には戻れませんし、私は経済的にある程度は豊かなので離婚はありません」

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