「外国人なら200万円で」スイス“自殺ほう助”の実態 現地では驚かれなかったゴダールの死
作品同様、最後の最後まで世に難解な問いかけをし続けた人生であった。この13日に没したフランス映画の巨匠、ジャン・リュック・ゴダール。「気狂いピエロ」などの作品で知られる彼が選んだのは、自殺ほう助による死だった。
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【写真を見る】映画「軽蔑」を撮影中のゴダール監督とブリジット・バルドー
91歳という年齢は大往生の部類に入るが、自殺ほう助という幕の引き方は聞きなれないものである。
「ゴダール以前の映画は、フィクションを監督がわかりやすく観客に見せるというものでしたが……」
とその功績を述べるのは、映画評論家の白井佳夫氏。
「彼の映画は、現実の我々の人生そのままに先が予想できないまま進んでいく。代表作『勝手にしやがれ』では、主人公が無軌道に生き、破滅的に死んでジ・エンドとなります。街にカメラを持ち出して自由自在に移動撮影を行うのも新しい手法で、映画そのものの革新運動を行った」
外国人の場合は200万円ほど
そのゴダール、没した地はスイス。彼の国で認められる自殺ほう助を利用した。
「病気ではなく、高齢による不具合や症状を原因として、と報じられています」
とは、在仏ジャーナリストの広岡裕児氏。
「慢性的な体の痛み、目や耳の衰えに加え、うつや孤独感が重なった、と」
日本では、その理由で自殺するとは理解し難いし、そもそも認められていないが、
「スイスは世界で唯一、自殺ほう助を目的とした外国人が死ねる国です」
とは、『安楽死を遂げるまで』などの著書を持つ、ジャーナリストの宮下洋一氏。
「自殺ほう助団体に登録し、複数の医師が診て認められれば可能となる。医師が点滴の中に入れた致死薬を、患者自身がストッパーを開け、体内に入れる。そのような手法で行われます」
外国人の場合は、200万円ほどが必要だという。
「医師が判断すれば、ゴダールのように明確な病気でなくても可能な場合もあります。条件のひとつに“耐え難い苦痛”があり、それは肉体的だけではなく、精神的な苦痛でも認められるようになってきた」
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