韓国に通貨危機の足音 ウォン急落に打つ手なく「地獄の釜」が開いた

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民間のドルを召し上げ

 韓国の通貨当局は苦し紛れの「弥縫策」に出ています。9月23日に発表したのが韓銀と国民年金基金との間の通貨スワップ。国民年金が海外の外貨建て資産を購入する際に、韓銀からドルを借りる――という手法で、100億ドルを限度としています。

 市場でのウォン売り・ドル買いが減少するので、短期的にはウォン安要因を抑えることはできます。しかし、その分、ただでさえ不足気味の外準が事実上、目減りするわけで、マーケットが韓国への信任を落とすのは確実です。

 それに介入に必要な外準が確保できなくなったら、韓銀はこの契約を打ち切ることになるでしょう。そんなことになったら市場に「韓国=断末魔」のサインを送ることになります。

 中央日報の「韓銀・国民年金『100億ドル通貨スワップ締結』」(9月24日、日本語版)によると、2008年の通貨危機の際、韓銀は年金基金とのスワップを打ち切った「実績」があります。

 なりふり構わぬ作戦はさらにエスカレートしています。中央日報の「ウォン相場防衛へ…企業の海外資金、国内に持ってくれば恩恵」(9月26日、日本語版)によると、政府は民間の保有するドルを吸い上げる方針です。

 標的とするのは造船会社。造船業界では船舶の輸出代金をもらうまでに時間がかかるので為替変動のリスクを減らすため、ドルを先物で売っておくのが普通です。

 今までは民間銀行がこのドルを買ってきましたが、今後は通貨当局や政策金融機関も買い上げる作戦です。造船会社や民間銀行が貴重なドルを溜め込むことを防ぐ狙いとみられます。

 ドルの先高を見込んだ輸出企業が輸出代金のドルをウォンに替えずにそのまま持つ傾向が強まっています。一方、輸入企業は差損を防ごうと、当面は不要なドルの手当てに必死となっています。

いずれもウォン安要因に働くので、通貨当局はこうした取引に目を光らせています。法的には「溜め込み」を規制できないはずなのですが。

厚みと質が異なる日韓

――死にもの狂いですね。日本も円安ですが、そこまでの危機感はない……。

鈴置:確かに、日本と韓国の通貨は同程度に売られています。新型コロナ前の「平時」では1円=10ウォン前後でした。ドル金利が上がり始めて円もウォンもドルに対しては安くなりましたが、円とウォンの関係は今も1対10で、平時と変わらないのです。

――ではなぜ、韓国だけで「危機」が叫ばれるのでしょうか。

鈴置:ざっくり言えば、ストックでもフローでも厚みと質が異なるからです。典型的なのが外準。日本が約1兆3000億ドル前後で韓国は4300億ドル前後。国の規模を考えれば似た水準に見えますが、通貨防衛に投入できる「真水」の外準には大きな差があります。

 日本の外準のうち、40-50%は信頼性が最も高い米国債と見られています。「新宿会計士」のペンネームで政治経済サイトを運営する公認会計士氏が「日本の外準高に含まれる米国債の額を試算してみる」(9月21日)で「少なくとも5000億―7000億ドル」と推計しています。

 一方、韓国の外準のうち米国債は10数%の600億ドル強と見られています。外準の多くは発展途上国の債券など金利は高いけれど、いざという時に現金化できないものに化けているのです。

 2008年の通貨危機の際にも、韓国は「怪しい外準」のために破綻しかけました。あれほど痛い目に遭ってもバクチ癖が直らないのです(「韓国人がウォンを売り始めた 政府が『通貨危機は来ない』と言うも信用されず」参照)。

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