レスリング、パワハラ騒動から4年…小中学生レスラーが熱戦も「栄和人杯」が注目されない理由

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柔道は小学生の全国大会廃止

 子供たちの試合では、負けて大泣きする男子の姿が印象的だった。

 中学生の試合になると、親やコーチの声もつい大きくなる。勝って飛び跳ねる子もいれば、負けて母親に「全然、闘志がないじゃないの」と怒られてうつむく子も。

 レスリングの試合は勝っても負けても、マットを降りる前にまず、相手のセコンドに挨拶に行く。他の格闘技にはない美点である。負けた子はギャン泣きしながらも、「敵」に指示を出していた大人に挨拶に行かなくてはならない。子供にはよい経験だろう。

 ことし全日本柔道連盟の山下泰裕会長が、「保護者が過熱し、怪我も増え、子供が柔道を嫌いになってしまう」と、小学生の全国大会を取り止めた。

 このことについて栄氏は、「行き過ぎた競争はよくないが、試合を望む親も多い。勝って喜び、負けて涙する試合をなくしてしまうと、目標もなくなりがち。大会は開いておき、参加したい人が参加すればいいのでは。まずはルールとマナー。子供を罵倒したり叩いたりする親には注意します。コロナで様々な制限がありましたが、マットの消毒など対策も完璧にして開けてよかった」と話す。

 山下会長は「親が審判を罵倒する」ことを問題視したが、先の軒端さんのように、親自身が審判を経験し、その苦労を知ることは有意義だ。伊藤さんは「上の男の子は野球をやっていましたが、親たちが過熱し過ぎと思ったこともありますね。でも子供たちは、勝って喜び、負けて悔しがる、そのような体験が大きな成長の糧になるのでは。ここでは私の父までがコーチ役で参加し、一家3代で楽しんでいますよ」と話す。

教え子たちが駆け付けた

 大会には愛知県知事の大村秀章氏や大会副会長の吉田沙保里さんも駆けつけて挨拶した。可愛い赤ちゃんを抱いた五輪2連覇の川井梨紗子さんや、妹の友香子さん(東京五輪金メダル)の姿も。彼女らは栄氏の教え子である。

 栄氏が至学館大学(旧・中京女子大学=愛知県)を中心に選手の指導をしていたため、愛知県は「金メダリスト多数輩出県」となった。

 この大会を「栄和人杯」と命名した愛知県教育・スポーツ振興財団の岡本範重理事長は、「栄和人氏の尽力で愛知県はレスリング王国となった。2019年から県のスポーツアドバイザーとして財団に在籍してもらい、レスリング教室やスポーツ教室にアドバイスをいただいている。この大会から将来、オリンピックなどで活躍する選手が出てほしい」と期待する。

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