ファンの感動を呼んだ! 引退試合で“最後の最後”に輝いた名選手列伝
プロ初打席と現役最後の打席で本塁打
今年もまた、名選手が今季限りで引退表明する時期となった。巨人や西武で活躍した内海哲也や中日、阪神などで主軸としてチームを牽引した福留孝介、日本ハムやオリックス、阪神でファンを魅了した糸井嘉男らがユニフォームを脱ぐ。引退試合でファンに最後の雄姿を見せることになるが、近年の引退試合はセレモニー色が強くなっている感もある。一方で、過去にはファンの感動を呼ぶプレーで現役最後を華々しく飾った選手がいた。【久保田龍雄/ライター】
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プロ初打席と現役最後の打席でいずれも本塁打を放つという「史上初の珍記録」を達成したのが、ヤクルト・小野公誠である。
2008年10月12日の横浜戦、この日引退を発表した小野は、3対3の8回2死無走者で、代打として現役最後の打席に立った。
牛田成樹の初球、外角高め138キロを思い切り空振りした小野は、いったん打席を外して溢れる涙を拭うと、2球目の137キロが真ん中に入ってくるところをフルスイング。小野の気迫が乗り移ったかのように高々と上がった打球は、決勝弾となって左翼席に吸い込まれていった。
この1点を守護神の林昌勇が守りきり、小野は見事勝利のヒーローとして有終の美を飾った。そして、話はそれだけでは終わらなかった。
実は、小野はプロ1年目の1997年7月20日の巨人戦で、途中出場の9回に回ってきたプロ初打席でも、三沢興一から2ランを放っていた。プロ初打席と現役最終打席の両方で本塁打を記録するとは、まさに「始めよければ終わりよし」。
試合後、同じくこの日を最後に引退する真中満、度会博文、河端龍とともに引退セレモニーでファンに最後の顔見せを行った小野は「ホームランで始まり、ホームランで終わった野球人生は宝物です」と挨拶し、スタンドから大拍手を贈られた。
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