話題作が目白押し! 秋の新作アニメでも“ひとり勝ち”「ジャンプ」不動の強さの秘密

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アニメ制作会社がブランド化

 最後にもうひとつ、「チェンソーマン」で指摘しておかなければならないのは、本作が複数企業の共同出資による製作委員会方式でなく、アニメーション制作会社MAPPAが全額出資している点だ。MAPPAは設立からわずか10年の新興スタジオだが、直近で大ヒット作「呪術廻戦」を制作するなど、ハイクオリティの映像でアニメファンから圧倒的支持を集める。

 大ヒットが見込める原作だけでなく、ハイレベルな映像をつくりだすスタジオも強力なブランドと化しつつあり、いまや製作委員会を組織しなくても制作会社が自ら出資して大型アニメをつくれる時代になったのだ。魅力的な原作をもとにした有力スタジオが生み出すアニメなら、配信会社も競って買い手となり、制作開始前からある程度の成功が見込めるというわけだ。

 それは毎シーズン、安定して制作される“異世界系”も同様である。異世界を舞台とした作品は世界的に人気で、配信権の購入金額は高騰。秋シーズンでも「勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う」、「転生したら剣でした」、「聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-」、「新米錬金術師の店舗経営」、「陰の実力者になりたくて!」、「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」などとかなりの本数が登場する。これらも当初から成功が見込める点で、アニメビジネスが保守化していることを裏付ける。

 いまのシーンの特徴として、漫画を原作としないオリジナルアニメの企画や、異世界系以外で初めてアニメ化される作品はジャンプ勢の影などに埋もれがちだ。それでも今シーズンの新作アニメは、そんな“辺境”からもヒット作が飛び出すことを期待させるほど、充実したラインナップとなっている。

数土直志(すど・ただし)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に国内外のエンターテインメント産業に関する取材・報道・執筆を行う。大手証券会社を経て、2002年にアニメーションの最新情報を届けるウェブサイト「アニメ!アニメ!」を設立。また2009年にはアニメーションビジネス情報の「アニメ!アニメ!ビズ」を立ち上げ、編集長を務める。2012年、運営サイトを(株)イードに譲渡。2016年7月に「アニメ!アニメ!」を離れ、独立。

デイリー新潮編集部

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