「オレの結婚は何だったんだ。そんな気持ちです」 不倫がバレた43歳男性が語る“再構築”できなかった夫婦仲の結末

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こずえさんの消息を探ると…

 その後、則晃さんの姉がこずえさんの消息を探偵事務所に頼んで探ったところ、こずえさんは仕事関係で知り合った男性の家に転がり込んでいた。

「しかも探偵事務所の調査によると、ふたりはかなり前からつきあっていたらしい。男はバツイチ独身、5歳年下です。ただ、離婚が成立したのはその3ヶ月ほど前。もしかしたら、妻は彼の離婚を待っていたのではないか。離婚するまでは両天秤をかけていたのではないか。そうとしか思えなくて……」

 何よりショックだったのは、あんなに過干渉だった息子に知らん顔をして出て行ったことだ。ということは中学受験を諦めたころから不倫をしていたのか、あるいはそれより前からなのか。

「オレの結婚は何だったんだ。そんな気持ちです。確かに不倫をした僕は悪い。だけど妻もしていたんじゃないか、それなのに僕だけ責められて、あげく離婚されて。息子は何も言いませんが、ショックは受けているはず。もちろん、こずえの行方は知らせていません。離婚したことは言った上で、お母さんともいつでも会えるよと伝えたら、『会わなくていいよ』と言っていた。何かを感じているのかもしれません」

 則晃さんの憶測も多少、入っているから、すべてが事実とは限らない。ただ、こずえさんが今、別の男性と暮らしていることだけは真実である。

「こずえは身の回りのものしか持って行かなかった。財産分与についても何も言わず、ただ離婚届だけ置いていきました。共働きでしたから、彼女もそれなりに貯めていたんでしょうけど、探偵事務所の報告によれば、こずえと一緒にいる男は、かなり稼いでいるようです」

 則晃さんは、フッと笑った。結局、女は稼ぐ男が好きなのでしょうかね、とつぶやく。不倫が発覚したとき、もっと怒ってくれればよかったのに。大ゲンカすればよかった。

「そういえば子育てではいろいろ揉めたけど、彼女は最後には言いたいことを言わないままふいっと引いてしまうんですよね。最初はガンガン言うけど、途中でパッとやめる。諦めが早いというか。だからきみには信念がないと言ったこともあります。そういうのも彼女には堪えたのかもしれません」

 だが息子に無関心なのが、彼にはどうしても許せなかった。だからこの夏、思い切ってこずえさんの会社まで会いに行った。

「僕を見て、さすがにこずえも驚いたようです。ちょっと時間を取ってほしいと言ったら、黙ってついてきました。喫茶店に落ち着いて、『息子のことをどう思っているんだ』と聞くと、『あの子はあなたがいればいいんじゃない?』と。思い通りにならない息子を愛せなかったと言ったんです。どうしてきみと結婚したのか、オレは今、当時の自分を呪っていると思わず口から出てしまった。こずえは憎悪に満ちた目で僕を見て、立ち上がって去って行きました。彼女の本音がわからない。本当は息子と離れて寂しいはずだと思いたい」

 結婚14年にして、あっけなく幕が下ろされた生活。そんなに長く一緒にいても、人と人とはわかりあえない。もちろん、30年40年一緒にいても、おそらく人間はわかり合えないものなのかもしれない。人は変わる。関係も変わる。則晃さんが不倫をしなければ、今も結婚生活は続いていたのだろうか。それは誰にもわからない。

 ***

 結果的にみれば、最後まで夫婦関係の修復を望み息子と一緒にいる道を選んだ則晃さんと、家族を捨てて不倫相手の元へ走ったこずえさんという構図になる。一読、こずえさんが悪者という気もするが、本当にそうだろうか。

 修羅場の後でこそ「息子のいる家庭を捨てていいはずがない」と反省していた則晃さんだが、和歌子さんとの不倫に熱中していた当時を振り返って「本当は離婚してもいいかとさえ思っていた」と白状してもいる。不倫相手を妊娠までさせていたから、タイミングさえ違えば、則晃さんが家族を捨てていたことだって十分ありえる。

「加害者だから何も言えない」と則晃さんは口にしていた。生活を共にしていた頃は色々と意見を異にすることもあったようだが、根っこの部分ではどちらも加害者の「似たもの夫婦」だったのではないか。離婚してそれが分かるというのが、なんとも皮肉である。割れ蓋に綴じ蓋のことわざもある。再構築にはお互いの「違い」をすり合わせる必要があるのかもしれない。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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