「オレの結婚は何だったんだ。そんな気持ちです」 不倫がバレた43歳男性が語る“再構築”できなかった夫婦仲の結末
無反応を続ける妻、「ずっとこのままか」と告げると
結局、和歌子さんが去り、彼は心身ともに家庭に戻るしかなかった。戻ってみると、離婚してもいいと思っていたことが不思議に感じられた。
「熱に浮かされていたのかもしれません。息子のいる家庭を捨てていいはずがない。だから妻には心から詫びましたよ。ただ、『きみが離婚したいなら考える』とも言いました。こずえにはこずえの意志があるはずだから」
こずえさんは「離婚はしない」と言った。このまま今まで通りの生活を続けていいのかと尋ねると、彼女はしっかり頷いたという。
「なかったことにはならないけどねと言われたので、『信頼を取り戻すためにがんばるよ』と言ったら、『信頼なんて一度崩れたら取り戻せるはずがないでしょ』と。だったら信頼できないオレと一緒に生活していく意味はないんじゃないか。そう言うと『そうかもね』と。直後だったから妻も冷静ではいられないのだろうと思って、その場は言い返しませんでした」
ただ、それからこずえさんはよそよそしい態度を崩さない。則晃さんがふともらした言葉には、いっさい反応しない。
「たとえば息子の贔屓のプロサッカーチームが勝ったことをニュースで見て、『お、勝ったな』言ったら、以前だったら『あの子、大喜びしていたわよ』と返してくれたのに、それがなくなった。僕とは口をききたくない感じ。話さなければいけないときは、妙に事務的な口調でしたね」
それが数ヶ月続いたとき、則晃さんは「ずっとこのままか」と妻に問いかけた。会話はしないつもりなのか、このまま80歳生きるとして、まったく会話なしでやっていくのか、と。妻はじっと彼を見つめていたが、「許せないのよ」とつぶやいた。
「どうしたら少しでも気がおさまるのか聞いたら、本人もわからない、と。『あなたが触ったものに触れない』『顔を見ると吐き気がする』とまで言われました。カウンセリングを受けたほうがいいと思うと言ったら、本気で怒られました。『あんたのせいでこうなったのに何言ってんのよ』って。不倫したことを怒っているのはわかります。だけど、結婚生活を続けると言った以上、心地よく続けたいじゃないですか。おまえが言うなというのはわかるけど、無言のまま家庭を続けることはできない。妻が僕を許せるようにカウンセリングを受けたらどうかというのが、そんなにおかしいのでしょうか」
不倫が発覚したとき、こずえさんは和歌子さんにはひどい言葉をぶつけているが、夫にはぶつけていない。そこに無理があったのではないか。ショックと怒りのあまり、夫に罵声を浴びせたり、暴力をふるったり、ものを投げつけたりする妻は多々いるが、こずえさんはどこかで自分を押し殺してしまったのではないだろうか。
「文句があるだろうから言ってと言ったことがあります。でも妻は『許さない』『信頼していない』とつぶやくばかりで、怒りをストレートに表していないんですよね。彼女は心のどこかで、感情を露わにするのはいけないことだと思っているみたい。理知的であろうとしているのでしょう。泣いたり騒いだりするタイプじゃないんです。無理がありますよね。僕は加害者だけど、和歌子が去って行ったときは泣きましたよ、妻の前で。それもまた妻を傷つけたことになるとは思うけど……」
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