「終活? 興味がないわ」 101歳のピアニスト・室井摩耶子が明かす、100歳を超えても元気な理由

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「終活? 全く興味がないわ」

 いきおい目を輝かせた室井さんが「たとえばね……手を出してみて」と言う。仰せどおりにすると、室井さんが指で私の手のひらを押した。最初はかすかに。そして徐々に強く。

「同じピアニッシモでも、これとこれは全然違うでしょう?」

 押すニュアンスのことだろうが、私が今ひとつ理解できていないことを室井さんが察したのだと思う。

「弾いてみましょうね」

 とピアノの前に移動。「エリーゼのために」を奏でてくれた。とても優しい音色、伸びやかな音色、しっとりした音色などを織り交ぜて。

 音色に心をわしづかみにされながら「ああ、なるほど」と思った。数限りなく弾いてきた曲にも、101歳だからこその趣きが出る。それを追求し続けておられるのだ。取材時、都内のホテルでのクローズドの公演を9月中旬に控えていた。近づくにつれ、こうして鍵盤を弾く時間が増えるのだ。

 ちなみに、室井さんは「終活? 全く興味がないわ」と言い切った。そんなことをする時間は惜しいとばかり、ピアノに融通無碍に向き合う姿がかっこいい。

井上理津子(いのうえりつこ)
ノンフィクションライター。1955年奈良市生まれ。京都女子大学短期大学部卒。タウン誌を経てフリーに。人物ルポや町歩き、庶民史をテーマに執筆。著書に『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『親を送る』『絶滅危惧個人商店』など。

週刊新潮 2022年9月22日号掲載

特別読物「『百寿の奥義』を学びたい 『元気な100歳』は老後をどう過ごしてきたか」より

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