「終活? 興味がないわ」 101歳のピアニスト・室井摩耶子が明かす、100歳を超えても元気な理由

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「お城に住んでいる紳士に、夢中になられたことも」

 室井さんは、1927(昭和2)年に6歳でピアノを始めた。「全人教育」で知られる成城小学校(現・成城学園初等学校)に入学した年だ。人一倍の好奇心と、男の子と相撲を取るお転婆な面を併せ持つ子だった。ピアノの稽古はことのほか好きになり、小学校の卒業文集に「ピアニストになって、世界中を演奏してまわります」と書いた。

 長じて東京音楽学校(現・東京藝術大学)に進み、首席で卒業。戦時中にもドイツ、イタリアの音楽は禁止されていなかったのが幸いし、45年1月、日本交響楽団(NHK交響楽団の前身)の演奏会でソリスト・デビューを果たす。56年にドイツに拠点を移し、13カ国でリサイタルを開催するなど往時の活躍ぶりは枚挙にいとまがない。64年にはドイツで出版された『世界150人のピアニスト』に選ばれた。

「お城に住んでいる紳士に、夢中になられたこともありましたよ」

 と、ドイツ時代の甘い思い出を頭陀袋から引っ張り出してくれた室井さんだが、「他人と過ごす時間より、ピアノに触(さわ)る時間を優先してきた」ため、ずっと独身。59歳で帰国後、国内でも精力的にコンサートを行い、2018年度文化庁長官表彰など受賞も数多だ。

「ピアノと向き合うと、今も新しい発見がある」

 閑話休題。そんな輝かしい過去を胸に、今の暮らしぶりは――。

「若い頃のようには体が動かない」のは致し方ない。そのカバーをプロの手に委ねることにちゅうちょは全くない。毎日のようにヘルパーさん、マッサージ師、医師らの訪問を受けつつ、「寝たい時に寝る、起きたい時に起きる、(ピアノを)弾きたい時に弾く」という日々を貫いているという。

「夜、急に思いつきピアノを弾き始めて、気が付けば夜中の1時、2時ってこともよくあります。ピアノと向き合うと、今も新しい発見があるんですよ。この年になったから、やっと表現できたということもね」

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