「下北住めば?」と言われたけれど… 歌人・伊藤紺が「杉並に住んだから東京を愛せた」と語る理由

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「杉並に住んだから東京を愛せた」

 今年の2月に横浜に引っ越し、年齢=都民歴に終止符を打った。初めて東京の外で、大きな家を借りて住んでいて、驚くほど楽しい。まちが広々としていて人混みが少なく、なんとなくすかっとしている。家賃も飲み代も全然違う。東京の混雑や物価への不満は、気付かないうちにじわじわと大きく育っていたらしい。その時の心にしっくりくる土地を求める貪欲さと見極める力は一生の財産だと思う。杉並に住んだから東京を愛せたし、杉並に住んだから東京を離れることができた。自分の価値観をちゃんともつってこういうことなんだろう。ありがとう、杉並。やさしくて、明るくて、たくさん許してくれた、初めての恋人のようなまち。

伊藤 紺(いとう・こん)
1993年生まれ。歌人。2022年、『肌に流れる透明な気持ち』『満ちる腕』(短歌研究社)新装版発売。

デイリー新潮編集部

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