借金苦から風俗嬢、愛人生活を経て税理士になった女性の告白 「パパ活女子にも納税の大切さを知ってほしい」

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 夜の仕事で働いた経験のある女性は、引退後、自身の過去を伏せることが少なくない。その点、東京都内に税理士事務所を構える 沖有美子さん(44) は、性風俗店に勤めていた過去を隠すどころか、堂々と売りにして活動している。『売る男、買う女』(新潮社)などの著書があり、自身も夜の世界の仕事で働いた経験のあるノンフィクション作家の酒井あゆみ氏がインタビューした。

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 沖さんが港区・南青山に「沖有美子税理士事務所」を設立したのは36歳のとき。経営者団体の会長も務め、これから起業しようという社長や法人を相手に税理士業務を行っている。

 同時に彼女は、こんなユニークな取り組みも。

「一般企業って『爽やかすぎ』で、どうしても自分にはしっくりこなくて。だから『夜職の方相手の税理士をやろう!』って思ったんです。夜職の子は、確定申告の仕方が分からない子ばかりなのか気になっていたので」

 実際、夜職の納税事情は良いとはいいがたい。国税庁が毎年発表している 「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位 10 業種 」をみると、一昨年発表の「令和元事務年度」まで、「風俗嬢」と「キャバレー(キャバクラ)」が常に1位と2位を占めていた。コロナ禍の影響が大きかったであろう「令和2事務年度」こそランキングが変動したものの、それでもキャバクラは4位 で、1件あたりの申告漏れ額は2,834万円だった。

「だから風俗店に勤める方やキャバクラの方、そしていわゆる『パパ活』をしている女の子に、税金を納める大切さやメリットを説明しているのです。きちんと確定申告をすることが『ちゃんとした仕事をしている』という誇りにもつながります」

 そんな女性たちを相手にした相談は、ときに2時間にものぼる。税理士としての儲けを考えれば、ほかに得意とすべき顧客はいるはずだ。それでも女の子たちの相談に乗ろうとする沖さんの気持ちが、私も少しだけわかる。かつて私がアダルトビデオのプロダクションを経営していた頃、会社は「駆け込み寺」と呼ばれ、様々な女の子たちが入り浸っていた。作家業もしていたので、話をきいて仕事につなげたい思惑がなかったと言えば嘘になるが、ほとんどは「取材」に至らない「雑談」に終わり、仕事にはならなかったものだ。

 沖さんが「パパ活女子」たちから信頼されるのは、彼女自身にも夜職の経験があるからだ。

「税理士になったきっかけを遡れば、風俗嬢だったころ、お客さんの一人が『水あげ』してくれたことでした。当時抱えていた闇金の借金とホストの売掛、合計400万円を肩代わりしてくれて、住むところから何から準備してくれたのです。その男性の愛人になったんですね。その人、風俗店で働いていた私に『君はこんなところにいちゃいけない』って言ってくれて」

 数年前に、セクシー女優が億単位の所得隠しを税務調査で指摘されたこともあり、夜の仕事をしている女性たちの納税への関心は高い。だが「普通」の税理士には、自分がそういった仕事をしているとは打ち明けにくい。その点、自身と似た過去をもつ沖さんは頼りになる存在なのだ。

「医者の娘」だった沖さん

 鹿児島県出身の沖さんは、勤務医の父親、検査技師の母親の元に長女として生まれた。近所のスーパーに行くと「あの先生の娘さんですよね」といわれるほど、地元では知られた一家だったという。

 特に両親に厳しく育てられた 記憶はないが、当然のように、自然と中高一貫の進学校に通う優等生になっていた。2歳年上の兄は、九州の有名大学に進み現在は会社経営者だというから、教育熱心な家庭だったことは想像できる。だから沖さんも大学に進学すると誰もが思っていた。だが彼女が選んだのは、東京の英語の専門学校に進む道だった。

 医者の子が医者になるというレールから自ら外れていったのは、沖さんが16歳の時に父を癌で亡くしたことが大きかったのかもしれない。別の形で、手に職となる「資格」を求めての上京だった。

「一人暮らしを始め、月に10万円の仕送りをもらっていました。でも、家賃と光熱費でなくなって、お金が全然足りなくて。パチンコ屋の定員、ウエイトレス、テレアポ、とか何個もバイトを掛け持ちしていましたね。やっぱり、好きな洋服やバッグを買って、流行りの格好をしたいじゃないですか。友達とも遊びたいし。でも、周りは『なんでバイトなんかするの?』っていう実家暮らしの子たちばかりで。私はマイナスからのスタートという感じでした。まあ、地方から出てきた子ってみんなそうですよね」

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