いつもの歯切れの良さはどこへ…「COCOA」の大失敗を認めない河野太郎大臣の“本音”

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デジタル庁の位置づけの変化

 河野氏がCOCOAを正面から批判しない理由は他にもあると、政府の新型コロナ対応を取材してきたジャーナリストは言う。

「岸田文雄首相は、今年8月の内閣改造で、新型コロナ対応をすべて厚労省に任せる体制に戻しました。ワクチン接種推進担当を単独の大臣にせず、松野博一官房長官の兼務にしたのが象徴的です。そんな中で河野氏は、担当のCOCOAを批判すれば墓穴を掘ることになりかねないと考えているのでしょう」

 だからといって、「岸田首相は、デジタル相の河野さんに、本気でDXをやらせようと考えているわけではない」と先のジャーナリストは言う。

「デジタル庁は、菅前首相の肝煎りで発足した役所です。省庁ごとにバラバラだったシステム発注を一元化することをきっかけに、役所の縦割りを打破するというのが狙いでした。ところが岸田首相は、役所のDX化や縦割り打破には全く関心がありません。内閣改造で河野氏をデジタル相に据えたのも、首相の座を脅かす可能性がある河野氏を“封じ込める”のが狙いと見られます。実際、前任のデジタル相・牧島かれん氏が兼務していた『行政改革担当』と『内閣府特命担当相(規制改革)』を外して、沖縄・北方対策などを担う岡田直樹・内閣府特命担当相の所管にしました。縦割り打破のためのDX化を担うのがデジタル相だという位置づけを変え、“軽いポスト”にしたのです」

DX化の今後

 さらに、デジタル庁に民間から移ったIT専門家は「デジタル庁自体の存在意義も薄れている」と言う。

「デジタル庁が発足したのは2021年9月ですが、それから1年も経たないうちに大臣は3人目です。民間から力のある専門家を招くとしていた『デジタル監』も、初代の石倉洋子・一橋大学名誉教授はまったく存在感を示さないまま半年あまりで辞任し、2代目の浅沼尚氏に代わりました。しかも首相の後ろ盾が薄れて、霞が関改革という発想がなくなっています。『何のためのデジタル庁か分からなくなってきた』という声も庁内から聞こえてきます」

 前出のジャーナリストも言う。

「河野氏にデジタル相と消費者担当を兼ねさせたことで、国民が便利だと感じるデジタルサービスを作るのがデジタル庁の仕事というムードになっています。将来の首相を狙う河野氏も、ここで霞が関を敵に回すのは得策ではないと思っているでしょうから、既得権を打破するような役所のDX化には踏み出さないでしょう」

 こうしたデジタル庁の成り行きに、ほっと胸をなで下ろしている人たちがいると、前出のデジタル庁に移った民間職員が語る。

「システム発注が一元化されることで、これまで利権を握っていたシステムベンダーが排除されるのではないかと、大手IT企業は戦々恐々としていました。会社から籍を抜いてデジタル庁に職員を送り込んでいる企業も少なくありません。菅首相の時は大きく変わるのではと思われましたが、岸田首相になって、どうやら発注も元の所管省庁の意見が通るようになっています。結局、デジタル庁は、菅さんが思い描いた通りの役割を果たすことがないまま終わりそうです」

 結局、COCOAのような役に立たないシステムを省庁ごとに作っては、多額の予算を費やしていく日本型の仕組みは変わらないということなのだろうか。

デイリー新潮編集部

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