選手やファンが大乱闘…熾烈な優勝争いで起きた「とんでもない大騒動」

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「王退場!」

 9月12日、首位・ヤクルトと2位・DeNAとの直接対決で、ヤクルト・村上宗隆への死球直後、DeNA・佐野恵太に対し、報復に思える内角攻めが行われ、あと味の悪さを残した。過去にも優勝争いの渦中で、死球などをきっかけとする乱闘やスタンドのファンが騒ぎを起こした“事件”があった。【久保田龍雄/ライター】

 まずは伝統の一戦、巨人対阪神をめぐる騒動を紹介する。1968年9月18日、阪神が連勝し、ゲーム差なしまで追い上げた天王山決戦第3戦は、阪神・バッキーの王貞治への危険球をめぐり、両軍ナインによる大乱闘が勃発。巨人・荒川博コーチとバッキーが暴力行為により、ともに退場になった。

 だが、2人の退場だけでは収まらず、その後もファンを巻き込んでのゴタゴタが続く。岡田功球審が荒川コーチとバッキーの退場を場内放送で告げると、スタンドの阪神ファンが「騒ぎの発端になった王が退場にならないのはおかしい」と騒ぎだし、「王退場!」「王退場!」の大合唱。興奮してグラウンドに飛び降りるファンも出て、甲子園は再び異様な雰囲気に包まれた。

 これに対して、岡田球審は「王選手は暴力行為をしていないので、退場処分の対象にならない」と説明し、20分の中断を経て、ようやく試合再開に漕ぎつけた。

 ところが、バッキーに代わって登板した権藤正利のシュートがすっぽ抜け、王の右耳後部を直撃する。王は昏倒し、グラウンドに搬送用の担架が運び込まれた。「わざとやったろう」と巨人・金田正一がベンチを飛び出し、権藤を突き飛ばしたのを合図に再び両軍ナインによる乱闘が始まった。

 そんな殺伐とした空気を一瞬にして吹き飛ばしたのが、4番・長嶋茂雄のバットだった。試合再開後、怒りを闘志に変えて、左翼席に試合を決める3ランを叩き込んだのだ。「あの打席はどんなことをしても打ってやるという気持ちだった」という長嶋の快打で首位を守った巨人は、同年V4を達成した。

 一方、阪神は13勝を挙げていた先発三本柱の一角・バッキーが右手親指骨折で残りシーズンを棒に振ったのが致命的となり、失速して優勝を逃して、乱闘に泣く結果となった。

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