錦鯉「渡辺隆」はなぜ女性芸人の間でモテまくっているか

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 8月7日放送の「7.2 新しい別の窓」(AbemaTV)にて、女性芸人たちの間で意外な人物が高評価を得ていることが明かされた。それは、錦鯉の渡辺隆である。

 女性ピン芸人のあぁ~しらきが、女性芸人の間の「あるあるネタ」として「錦鯉の渡辺隆さんに惚れがち」と発表したところ、共演する女性芸人たちが一様に同意していたのだ。優しく接してくれるだけでなく、「きれいになったな」などとストレートな誉め言葉も投げかけてくれることから、好感度が高いのだという。

 昨年末の「M-1グランプリ」で優勝を果たした錦鯉は、その後、数多くのバラエティ番組に出演して活躍している。ただ、ほとんどの番組では、スポットが当たるのは渡辺の相方である長谷川雅紀の方だ。長谷川は、頭髪が薄く歯も数本抜けていて、底抜けに明るいおバカキャラである。50歳という歴代最高齢で「M-1」の王者となったことでも話題になった。

 長谷川はそんなインパクトの強いキャラクターを持っていて、バラエティ番組でもズレた発言を連発して笑いを巻き起こしている。渡辺はそんな長谷川の横に立ち、要所要所で彼にツッコミをいれていく。どちらかと言うと地味な役回りである。

 しかし、業界内では渡辺の才能を評価する声も大きい。錦鯉のネタ作りは渡辺が担当している。渡辺が長谷川のおバカキャラを面白いと思い、その魅力を最大限に引き出すようなネタを考え続けたことで、彼らの漫才は面白いものになった。

 長谷川自身は、自分のどういうところが他人に面白いと思われているのか、自覚がないような部分もあった。漫才の冒頭で、長谷川が自分自身の頭を指さして「空っぽだよ」と言うくだりがある。

 このネタを最初に渡辺から提案されたとき、長谷川はどこが面白いのか理解できなかったのだという。大の大人が自分の頭が空っぽだと宣言することが、どうして笑いにつながるのかわからなかったのだ。

 しかし、実際に観客の前でネタを披露したところ、「空っぽだよ」と言ったところで大きな笑いが起きた。そこで長谷川は初めて「ああ、これって面白いんだ」と気付いた。

 渡辺のネタ作りの才能は、バイきんぐの小峠英二にも認められていた。小峠は、自分がネタを作るとき、渡辺にバイト代を支払って一緒にアイデアを練ってもらっていた。バイト代は時給で支払われていたため、渡辺はアイデアを思いついているのに何も出てこないふりをして、時間を引き延ばしてバイト代を稼いでいた、という逸話もある。

 渡辺は「おじさん」然とした風貌の中年芸人であり、子供の頃からおじさん臭いと言われてきた。44歳の今頃になってようやく年齢が外見に追いついてきて、枯れた中年男性ならではの渋い魅力が出てきた。そういうところも女性芸人から支持される理由なのかもしれない。

 渡辺は、芸人の中では珍しく自己顕示欲が薄く、グイグイ前に出るタイプではない。しかし、そのネタ作りの才能やツッコミの技術は認められていて、今後は芸人司会者として頭角を現す可能性も十分ある。芸人としての能力が高く、立ちふるまいも紳士的で、業界内の評判もいい。渡辺こそは錦鯉の頭脳であり、隠れた実力者なのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

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