史上初の「代打逆転満塁サヨナラV決定弾」…脇役が大活躍した優勝決定試合

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苦労人のでっかい仕事

 2019年、自らのバットで巨人に5年ぶりの優勝をもたらし、その名のとおり、大きく輝いたのが、育成から這い上がり、前年まで1軍出場がなかった増田大輝である。

 9月20日、2位・DeNAとの直接対決を制し、マジックを2とした巨人は翌21日、優勝をかけて再びDeNA戦に臨んだ。

 だが、DeNAも最後の意地を見せ、8回を終わって1対2。9回も2死無走者となり、「あと1人」まで追い込まれたが、ここから連続四球で一、二塁のチャンスをつくると、小林誠司が山崎康晃から右前に執念の同点タイムリーを放ち、延長戦にもつれ込んだ。

 そして10回、亀井善行、坂本勇人の連続四球などで2死一、三塁とし、7回に代走として途中出場後、二塁の守備に就いていた増田に打順が回ってきた。

「直球だけに絞れ」と原辰徳監督から指示された増田は、三嶋一輝の152キロ直球が真ん中低めに入ってくるところを見逃さず、しぶとく一、二塁間を破った。三塁走者・亀井が決勝のホームイン。その裏のDeNAの攻撃をデラロサが3者三振に切って取った瞬間、5年ぶりVが決定した。

「まさか自分が挙げた得点が優勝を決めるなんて。1軍の舞台で優勝につながる1本が打てたのは、自分の中で宝物になる」(増田)

 大学中退後に鳶職人も経験し、独立リーグを経て、育成ドラフト1位で巨人に入団して4年目の26歳。「1年前は1軍で1試合でも出られたらいいな」と夢見ていた苦労人が1軍出場72試合目にして、でっかい仕事をやってのけた。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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