私はFBIのために北朝鮮「一等書記官」の指紋を入手した 元公安警察官の証言

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ペリエとナイフ

 勝丸氏は、親睦パーティーに参加した。

「パーティーはレストランで開催されました。60人ほど集まりましたが、着席式だったのでホッとしました。立食式だと、コップやナイフ、フォークを次々に取り換え、ウェイターが持っていくので指紋を採るが難しいのです。いざという時は、ウェイターにチップを握らせてコップを取ってもらおうと考えていました」

 パーティーが進み、皆、席を立って名刺交換をするようになると、勝丸氏は、マレーシアやタイの外交官と名刺交換しながら、徐々に北朝鮮の一等書記官に接近していった。

「一等書記官が瓶に入ったペリエ(炭酸水)をコップに注いでいるのを見ました。そこで、彼が席を外した隙に、さっとペリエとナイフを取ってしゃがんで片膝を立て、靴紐を直すふりをして用意した袋に入れ、内ポケットに納めました。そして何食わぬ顔をしてパーティー会場を後にしたのです」

 勝丸氏は、FBIの関係者にペリエとナイフを渡した。もちろん、かなり喜ばれたという。

「後日、FBIの関係者から指紋が一致したという報告を受けました。日頃からアメリカの情報機関に協力していれば、何かあったときに彼らも動いてくれます。必要な情報も提供してくれます。この世界は、まさにギブアンドテイクなんです」

 一等書記官は外交特権があるので逮捕はできないが、その後FBIはICPO(国際刑事警察機構)に国際手配をしたという。

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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