天然の万能薬「唾液力」の鍛え方 抗菌物質がウイルスを阻止、オススメな食品は?
運動量も影響
さらに、唾液腺を守ることも重要です。唾液腺は活性酸素に弱い特徴があります。そのため、アスリートのように激しい運動をし続けると、酸素を多く取り込む分、余分な活性酸素が生み出されてしまい、唾液腺を傷めることにつながります。したがって、体力維持・増進も考えたうえで大事なのは「適度な運動」です。具体的には、1日3千歩あるく高齢者よりも、7千歩あるいている高齢者のほうが、唾液中のIgAの増加率が高かったという結果が学術誌に報告されていますので、ひとつの参考になるのではないでしょうか。
唾液腺にダメージを与える活性酸素を除去するためには、抗酸化作用の高い食材を活用することも大切です。玉ねぎや青魚、オリーブオイル、もずくにレモンにいちご。こうした食材を、普段から食事に取り入れることをお勧めします。
当然のことながら、唾液の99%を占める水分の補給も欠かせません。1日の分泌量に相当する1~1.5リットルは必要となりますが、食事からも水分は摂取できるので、飲料摂取量の目安は800~千ミリリットルくらいでしょうか。しかし、アルコール飲料は水分補給になりません。知られているように、アルコールを摂取すると、それを分解するために水分が使われ、むしろ脱水状態を生み出しかねないからです。
加えて、アルコールの解毒時には活性酸素が出ますので、二重の意味でアルコールの摂取は唾液力低下につながります。私もお酒は大好きですが、活性酸素を消去するビタミンCの錠剤を服用するなど工夫をしています。
「サラサラ唾液」と「ネバネバ唾液」
ここまで、唾液の持つさまざまな力と、唾液力向上の方法について説明してきましたが、唾液は本当に不思議な液体です。現時点においても、未知の成分が多く含まれていると考えられているのです。新たな成分の発見によって、唾液への注目度が高まることを期待していますが、残念ながら、現状では血液に比べてかなり軽視されている感が否めません。みなさんには、是非もっと唾液に興味を持っていただきたいところです。その助けになることを願い、ひとつ「唾液の歴史」をひもときたいと思います。
先ほど、マッサージのところで「サラサラ唾液」について触れましたが、一方で「ネバネバ唾液」も存在します。正確には前者を漿液性(しょうえきせい)唾液、後者を粘液性唾液と呼びます。同じ唾液なのに、なぜサラサラとネバネバの2性質が生まれたのでしょうか。
サラサラ唾液は水分が非常に豊富で、咀嚼する上で欠かせません。サラサラ唾液が出にくくなると、嚥下に支障を来し、昨今、死亡数が増えている誤嚥性肺炎のリスクが高まってしまいます。水分の多いサラサラ唾液は、口腔内を洗い流して清潔に保ってくれると同時に、食べ物を食道から胃や腸に送り届けやすくしてくれているわけです。このサラサラ唾液は、食事をしたり、リラックスした時など、副交感神経が優位な時に分泌されます。
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