天然の万能薬「唾液力」の鍛え方 抗菌物質がウイルスを阻止、オススメな食品は?

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 この2年半、私たちが最も神経を尖らせてきたことといえば飛沫感染。唾はとにかく危険で汚いもの――という“常識”は考え直したほうがよさそうである。なにしろ、抗ウイルス、脳機能維持等、唾はさまざまな力を秘めているのだ。専門家による「唾液力」解説。【槻木恵一/神奈川歯科大学教授】

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「天に唾する」

 世の中では、唾液は汚く、不潔であると思われ、とりわけコロナ禍においては、飛沫感染に注意しなければならない状況から“悪者”にされて、それこそ唾棄すべきもののような扱いを受けてきた印象があります。

 しかし、唾液は決してばい菌扱いすべきものではありません。それどころか、病気や老化を防いでくれる天然の万能薬とすらいえるのです。しかも、コロナの感染予防においても有効性が指摘され始めています。したがって、むしろ唾液を不浄視することのほうが、「天に唾する」行為ではないかと私は思うのです。

〈と、唾液の「新しい価値」を提唱するのは、神奈川歯科大学副学長で、同大歯学部教授の槻木(つきのき)恵一氏だ。

 約20年前から「唾液腺健康医学」を掲げ、体内にある同じ液体でも、血液の研究に比べて唾液研究が蔑(ないがし)ろにされてきたと言う槻木教授は、コロナ禍だからこそ「唾液力」が重要だと説く。口腔ケアには注目が集まっても、その口から出るのに軽視されがちな唾液。槻木教授が、唾液のすごさを解説する。〉

唾液に100種類以上の成分

 唾液といえば、真っ先に「消化液」のイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。唾液に含まれるアミラーゼという酵素は、食物のでんぷんと反応して麦芽糖へと分解させ、また唾液の水分は食物を咀嚼(そしゃく)しやすい形態である食塊(しょっかい)にしてくれます。

 しかし、唾液は単なる消化液にとどまらず、体の中で多彩な役割を果たしています。唾液の99%は水分ですが、実は残り1%に100種類以上の成分が含まれていて、それらがさまざまな良い働きをしてくれているのです。

 例えば、コロナ禍ではあらゆる局面で「抗ウイルス性」が注目されていますが、私たちのグループは、唾液が新型コロナウイルス感染防止に役立つ可能性があるとの研究結果を発表しました。

 口腔は、外界の異物が体内に入り込む際の入り口であり、ウイルスや細菌にとってまさに格好の侵入経路となっています。そのためマスクの装着が励行されているわけですが、もともと何の備えもないのかというと、そうではありません。「侵入者」を退治してやろうと最前線で待ち構えているのが唾液なのです。

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