「熊谷6人殺害事件」から7年 妻子を喪った遺族が語る「生きる道を教えてほしい」

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「心から笑えないんです」

 拭えない警察不信――。

 先に行われた刑事訴訟でも、司法には裏切られるような思いだった。裁判員裁判となった一審のさいたま地裁は18年3月、ナカダに死刑判決を言い渡した。しかし二審の東京高裁は、ナカダの心神耗弱を認めてこれを破棄し、無期懲役に「減刑」する判決を下した。さらに検察は19年末、上告を断念し、無期懲役が確定した。

 検察も被害者を見捨てるのか。

 人を信用できなくなった。心が折れそうになりながらも加藤さんは、事件発生からの7年間をなんとか生き抜いてきた。1日を生きるだけで、精一杯だった。

 今年の命日を前にして、加藤さんが現在の心境を語る。

「7年経ったからとかそういうことじゃなく、とにかく家族と喋りたいんですよ。ただそれだけが願いっていうか。生きる道を教えてほしい。何を思っているのか聞いてみたいですね」

 続く言葉に、加藤さんの思いが凝縮されていた。

「心から笑えないんです。いつまで経っても」

 国賠訴訟の行方は、失われた加藤さんの笑顔を取り戻すことができるだろうか。

水谷竹秀(みずたにたけひで)
ノンフィクション・ライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。5月上旬までウクライナに滞在していた。

デイリー新潮編集部

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