「熊谷6人殺害事件」から7年 妻子を喪った遺族が語る「生きる道を教えてほしい」
3人の後を追いかけたい――
4人で暮らしたあの日々はもう戻ってこない。
妻の美和子さんは手先が器用で、気配りができる女性だった。子供たちのために作る唐揚げやハンバーグの味が忘れられない。夫婦喧嘩をしたことはほとんどなかった。姉の美咲さんは控え目な性格だが、体育や音楽が好きだった。妹の春花さんは社交的で、知らない子でも話し掛ける。2人はたまにゲームの取り合いで喧嘩をした。そんな思い出を口にするだけでも胸が痛む。
できれば3人の後を追いかけたい――。
捜査一課長から「それは困る」と制せられ、「わかっていますよ」と答えても、そうしたい衝動に駆られた。
取り調べを受けている犯人のナカダは、「覚えていない」「やっていない」と供述しているという。その様子を聞かされた加藤さんは、涙ながらに怒りをぶちまけた。
「このまま否認して、すみませんでしたと言われても、それじゃ困るんです。真実を知らないまま判決が下されても意味がない。申し訳ないですけど、そんなんじゃ裁判に出ませんから。何がなんでも白状させてください。もしそれができないんだったらあいつを釈放させてください。俺が殺しに行きますから。俺はそれぐらいの気持ちでいます。自分のことなんてどうでもいいと思っていますから」
家族3人の命を一瞬にして奪われた遺族の、これが偽らざる心情だ。なぜヤツだけが生きているのか。なぜこの世に生きることが許されているのか。理不尽極まりない現実に、それでも1人で悲しみを背負い続ける加藤さんは、憎しみで打ちひしがれていた。
「被害者の遺族がこれだけ辛い思いをしているのに、犯人は否認して何も喋らない。とんだふざけた野郎だ。やはり自らの手で殺してやりたいです」
最後は捜査一課長から「自分のことを大事にしてください」と心配する言葉を掛けられ、この日のやり取りは終わった。
その後も県警側との話し合いは続いた。加藤さんが謝罪を求めるも、誠意ある対応を受けられず、両者の歩み寄りは見られなかった。
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