エリザベス女王が1975年に来日した際、昭和天皇の前で語ったこと 大先輩に人生相談?

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 来日していたイギリスのエリザベス女王(享年96)が、昭和天皇(1901~1989)に“人生相談”を依頼──。驚くべき事実が、一人のジャーナリストによって発掘されていた。

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 多くのメディアが「エリザベス女王」と報じているが、正式にはエリザベス2世、もしくは、エリザベス・アレクサンドラ・メアリー。日本時間の9月9日未明、滞在先であるスコットランドのバルモラル城で死去した。

 AFP=時事の記事などによると、17世紀以降、最も在位期間が長かった君主はフランス国王のルイ14世(1638~1715)で、72年と110日という記録になっている。

 在位期間が70年と127日だったエリザベス女王は第2位となった。ちなみに昭和天皇の在位期間は62年と14日で6位に入っている。

 エリザベス女王が昭和天皇にアドバイスを求めたのは1975年、夫のフィリップ殿下(1921~2021)と共に日本を訪問した時のことだ。

 5月7日、夫妻は羽田空港に到着。昭和天皇と香淳皇后(1903~2000)が迎えられ、その夜に宮中晩餐会が開かれた。

 一体、エリザベス女王は昭和天皇にどのような相談をされたのか、まずはその内容を紹介しよう。

《「君主というのは難しいものですね。陛下はもう在位五九年(注・四九年の間違いと思われる)にもなられますが、私はまだ二三年ですわ」》

 引用したのは『エンペラー・ファイル 天皇三代の情報戦争』(文藝春秋)からの一文。ジャーナリスト・徳本栄一郎氏の著書だ。(註)

 天皇と海外要人の会談となると、基本的には極秘扱いとなる。にもかかわらず、なぜ徳本氏は内容を知ることができたのか。

生々しい証言

 2007年4月、徳本氏は東京・有楽町の日本外国特派員協会で、バーナード・クリッシャー氏(1931~2019)の知己を得た。

 クリッシャー氏は、ニューズウィーク誌の東京支局長として、1975年に昭和天皇への単独インタビューを行ったことで知られる。

 日本に駐在する外国人記者から「ミスター・ジャパン」と呼ばれたほど日本社会に精通し、数々のスクープ記事を報じてきた。中でもクリッシャー氏のインタビュー記事は「天皇、首相、文化人からヤクザまで」が登場したという逸話が残されている。

 そのクリッシャー氏は外交官の真崎秀樹氏(1908~2001)に、89年から90年にかけて長期間のインタビューを行っていた。

 真崎氏は昭和天皇の通訳を長年にわたって務めた。そして天皇が海外の要人と会談した際、詳細な内容を記した英文日記を残していた。それを元にクリッシャー氏の取材に応じたのだ。

 だが、諸般の事情でクリッシャー氏は記事化できず、残された20本のカセットテープが徳本氏に託された。

「率直に言って、テープを再生するまでは、『単純な外交辞令のやり取りしか記録されておらず、あまりニュース価値はないな』と考えていました。ところが聞き始めると、すぐに背筋が伸びました。何しろ、昭和天皇が海外の要人と政治的な話題について、非常に生々しいやり取りを交わしていたからです」(著者の徳本氏)

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