森元首相を参考人で呼んでも「200万円」について聴かない特捜部 読売新聞と東京新聞は”忖度報道”
調書にも取っていない
森氏はあくまで高橋容疑者とスポンサー企業との贈収賄事件に関する参考人の扱いで、「被疑者」として聴取されているわけではないのである。ベテランの司法記者が解説する。
「組織委会長だった森氏は、みなし公務員として収賄罪の対象にはなる。ただ青木容疑者は200万円について『がん治療をしている森氏へのお見舞いとして現金を渡した』と供述しており、スポンサー選定について具体的な依頼をした証拠もない。グレーなカネのやりとりであったとしても、事件として立件するのは難しいのです。特捜部もそれをわかっているため、雑談ベースであっても200万円の授受については一切聴いていません。それを聴いてしまったら、被疑者扱いしていることになってしまうからです」
近頃は大物政治家の疑惑を特捜部が捜査しないと、決まって市民団体が告発して検察審査会に持ち込まれる流れとなっているが、
「現状では地検は不起訴にするでしょう。強制起訴されない限り、特捜部が森氏を被疑者として聴取することはないと思われます」(同)
なぜか“社会面の肩”で追いかけた読売
大物政治家へ配慮しているのは特捜部だけではない。新聞社もしかりだ。もっともおかしな動きを見せているのが、事件が佳境を迎えている最中の9月7日に「五輪汚職事件をめぐる一連のスクープ」で新聞協会賞を受賞したばかりの読売新聞である。
読売は特捜部が強制捜査に入る1週間前の7月20日朝刊で、高橋治之容疑者とAOKIとの間で不透明な資金の動きがあったことをスクープ。KADOKAWAルートについてもどこよりも早く報じた。確かにこれらの報道は協会賞を受賞するにふさわしい内容だった。
だが、森氏についてだけはどの社よりも遅れを取っているのだ。200万円については一切報じず、「参考人事情聴取」についても朝日が書いた翌日の朝刊で追いかけたものの社会面の“肩”扱いだった。
「これだけ深く五輪汚職を取材してきた読売が、200万円の件や事情聴取を知らなかったはずがない。あれは『自民党広報紙』と揶揄されてきた読売政治部が森さんに忖度した結果なのでしょう」
こう語るのはある検察関係者だ。
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