五輪汚職で200万円…なぜ森元総理はいつも逮捕されない? 過去のカネがらみの疑惑を検証

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未公開株について相談

「当時、特捜部がどこまで把握していたかは知りませんが、リクルートは84年に森さんにいち早く未公開株を譲渡しただけではなく、その後の政界への未公開株ばらまきについても森さんに相談していたのです」

 と、リクルート社元幹部。

「江副さんは教育課程審議会の委員になってから政界に近づいていきました。その際に水先案内人として頼ったのが文教族の森さんです。未公開株についてもその流れで相談することになったわけです」

 森元総理と江副氏が知り合ったのは、安倍晋太郎元外相の紹介だったという。

「森さんと江副さんはとても親しくしていました」

 とは、江副氏の元側近。

「『ねあがり会』という森さんの地元の懇親会に江副さんは頻繁に参加していましたし、森さんも江副さんに招かれてゴルフコンペや紅葉ツアーなどによく顔を出していました。しかし、リクルートが新聞で叩かれ始めるととたんに疎遠になったようで、未公開株の件が発覚すると、知らぬ存ぜぬ。逃げ足が速くて薄情な人、という印象です」

これまでターゲットにならなかった理由

 リクルート事件後、“冷や飯”の時期はあったものの、ほどなくして復権。その後は権力の階段を順調に上がっていった森元総理の「五輪利権問題」を長期にわたって追及してきた山口敏夫元労働相はこう話す。

「森は宮澤喜一内閣の時に自民党政調会長を、小渕恵三内閣の時に幹事長をやり、まるで男芸者のようにポストを渡り歩いた。だからこそ検察の捜査の手が伸びにくかった、という事情はあるのだと思います」

 先の司法記者が言う。

「森さんがこれまで収賄容疑などで立件されなかったのは、単に運が良かっただけではないと思います。検察が政治家を訴追する場合、基本的に、職務に関して請託の立証が必要な受託収賄罪を適用します。森さん、あるいは周辺の知恵者が職務権限や請託について細心の注意を払ってきたからこそ、これまでターゲットにならなかったのかもしれません」

「ノミの心臓」からくる慎重さ。それが森元総理の身を救ってきたということか。

週刊新潮 2022年9月15日号掲載

特集「五輪汚職AOKIから200万円でもセーフ!? なぜ『森喜朗元総理』はいつも逃げ切れるのか」より

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