政府が公表した国葬費は16億円 元公安警察官の試算は「38億円」の根拠
日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、9月27日に行われる安倍晋三氏の「国葬」警備費について聞いた。
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松野博一官房長官は9月6日、記者会見で安倍晋三元首相の国葬費用を明らかにした。政府は、国葬の設営費やバスの借り上げ費用として2億5000万円かかると発表していた。ところが、今回新たに警備費8億円、外国要人の接遇費6億円、自衛隊の儀じょう隊が使用する車両の借り上げに1000万円かかり、費用総額は16億6000万円程度になるというのだ。
「安倍元首相は警備の不備によって凶弾に倒れた。ですから、警察は国葬に不退転の決意を持って警備に臨むはずです」
と解説するのは、勝丸氏。
「190の国と地域から約6000人の要人が来日し、国内に157ある各国の大使館から外交官が約1000人弔問に訪れます。これだけの数の弔問客が予定されているのに、たった8億円の警備費ではとても足りません」
「即位の礼」は38億円
例えば、2019年10月に行われた天皇陛下の「即位の礼」はどうだったか。
「この時は国家元首級の要人は約200人来日しました。総額費用が160億8500万円。うち警備費は約38億円でした」
今回は、国家元首は50人来日すると予想されている。
「行事が一定期間続く即位の礼に対し、国葬は1日のみ。国家元首の来日は即位の礼の4分の1ということで、警備も4分の1以下として、8億円という数字になったと政府は説明しています。ですが、私に言わせればそんな単純なものではありません」
即位の礼の国家元首級の要人を含めた招待客は約2600人だった。
「国葬では、海外の要人や外交官だけで即位の礼の3倍にもなるわけですから、即位の礼と同規模の警備費が必要になるとみています。アメリカからは、ハリス副大統領とオバマ元大統領が参列しますが、国家元首でなくても、彼らにはボディーガードをつけるでしょう。単に国家元首の数が少ないというだけで、警備を薄くするわけにはいきません」
警備にあたる警察官はどのくらいの数になるのか。
「1989年2月に行われた昭和天皇の大喪の礼では、警備にあたった警察官は3万2000人でした。警備費は24億円でした。3年前に行われた今上天皇の即位の礼では2万6000人の警察官を導入しています。今回は、少なくとも3万人の警察官が必要ですね。4万人いてもいいと思います」
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