人体に悪影響を及ばす人工降雨もむなしく…中国発の食糧危機に要注意

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秋の収穫危機

 中国ではクラウドシーディング(雲の種まき)というヨウ化銀を雲に散布させて人工的に雨を降らす方法が当たり前になってきているが、リスクも指摘されている。

 まず第一に挙げられるのは、ヨウ化銀から発生する有毒な銀イオンが生態系を汚染し、人体を脅かすことだ。1回に散布されるヨウ化銀はわずかでも特定の地域で繰り返しこの技術を使用すれば、安全な基準値を超える可能性は十分にある。

 この方法ではトータルの降水量を変えることはできないことから、ある地域に人工的に雨を降らせると、その周辺地域では降水量が減るという問題もある。

 将来のリスクに目をつぶってでも人工降雨に躍起になっている地方政府の念頭にあるのは秋の穀物収穫だ。中国では年間穀物生産量の75%が秋に収穫されるが、穀物の生産にとって重要なのは夏の天候だ。穀倉地帯では稲の穂が育ち、トウモロコシの収量を決める季節を迎えているが、酷暑と干ばつが深刻なダメージを与えている。

 中国メデイアは「秋の収穫まで2か月」と連日のように秋の収穫危機を報じている。

 地方政府は農業技術者の専門チームを農村地帯に派遣し、早期収穫などの指導に当たっているが、政府の危機管理の専門家は「今年は最悪の猛暑が襲来した上に、沿岸部や南部への台風の上陸も少ない。中南部の干ばつが深刻になっており、秋の収穫が減少する地域が出る」ことを認めている。

 中国政府の公式見解は「全国的には食糧生産量が不足することはない」というものだ。北部と東北部は昨年秋の降水量が多く、今年も天候が比較的安定していることから、この地域の収穫が見込まれるからだと説明しているが、楽観は禁物だ。

 中国はコメ、小麦、トウモロコシの95%以上を自給しているが、収穫量が激減すれば輸入に頼らざるを得ない。

 ウクライナ危機の悪影響が残っている中、中国発の食糧危機が勃発すれば、世界の食糧事情はこれまでに経験したことがないほど悪化してしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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