年末までに円高になる可能性 その根拠は

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欧州発金融危機がもたらすシナリオ

 ノルウエーのエネルギー大手エクイノールは6日「英国を除く欧州の電力会社がヘッジ取引に伴う追加証拠金を少なくとも1兆5000億ドル(約210兆円)差し入れる必要があり、政府が支援しない限り、市場全体が機能を停止する恐れがある」と訴えた。

 電力会社は将来の販売価格の値下がりを回避するため先物市場でレバレッジ取引を行っているが、ロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー価格高騰を受け、担保として求められる証拠金が増加の一途を辿り、業界全体で手元流動性が逼迫している。

 欧州中央銀行(ECB)が8日、政策金利を0.75%引き上げることを決定したことで、電力会社の資金調達コストは今後一層膨らむことは必至だ。

 フィンランドやスウェーデン政府は既に資金繰り支援に乗り出しているが、業界全体が求める金額に比べて極めて少額だと言わざるを得ない。

 電力会社がガスの先物取引から発生した損失が原因で破綻した例として、2001年の米エンロンが有名だ。破綻時の負債総額は400億ドルを超え、一時は米国経済を揺るがす事態となったが、今回の規模(1兆5000億ドル)は桁が違う。

 ゴールドマン・サックスが「円は理想的なリセッションヘッジ通貨だ」と指摘するように、「欧州発金融危機がもたらす円高」シナリオも想定しておくべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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