45歳男性が送る、2人の不倫相手と崩壊した家庭の「三重生活」 そこで浮上する重大な金銭問題
「なにをどうやって整理したらいいのか…」
それは学生時代につきあっていた元カノの恭子さんとの偶然の再会だった。フラれたことだけ覚えていたが、彼女は「素敵なキャリアウーマン」になっていた。
「取引先の会長が亡くなってお別れ会が開かれた。そこで再会したんです。彼女は大手企業の管理職となっていて、地味なスーツを着ていても華やかなオーラがにじみ出ていました。そんなに出世しているなんて知らなかった。僕を認めると、彼女のほうから近づいてきました」
お別れ会のあと、ふたりで会場となったホテルのバーへ行った。日常に疲れきっていた彼は、そこで酔って彼女に愚痴をこぼした。オレは男として最低だ、生きていてもしかたがないとこぼし続けた。
「いろいろな意味で自信喪失していたんだと思う。男としての自分が元カノのメガネに叶うのかどうか試したかったのかもしれない」
恭子さんは、「ダメ男かどうか試してみよう」と言い出した。
「とんでもなく最高の一夜でした。恭子のおかげで僕はよみがえったような気がした。朝方、麻紀子のところに帰ると、彼女は一睡もせずに待っていた。とたんに申し訳ないことをしたと思い、どこに泊まったのかと聞かれて、学生時代の友だちと再会して飲み明かしてしまったと答えました。もちろん、相手が女性だとは言っていません」
麻紀子さんは「女でしょ」とつぶやいて泣き崩れた。自分は一生懸命がんばってきたのに、彼は離婚もしない、あげく他にも女性を作った。そう感じたのだろう。
「私はこんなにもあなたを受け入れてきたのに、あなたは私をも傷つけるのねと怒鳴られ、ひたすら謝りました。会社に着くと妻からサイン済みの離婚届が郵送されてきた。恭子からは、『私たち、運命の再会だったね』とメッセージがきた。なにをどうやって整理したらいいのかわからなくなりました」
恭子さんには家庭がある。夫との間にすでに成人した息子がひとりいると話していた。彼女とは最後の恋になるのだろうと彼は漠然と予感していた。
「人は自分のソウルメイトを探して生きているんじゃないでしょうか。より合う人を見つけたらそちらになびくのはしかたがないと思う。とはいえ、子どもには迷惑をかけたくないし、麻紀子を傷つけたくないし」
「煮ても焼いても食えない男」
麻紀子さんには妻が離婚する気になったことを告げていない。これから財産分与の協議をしなければならないのだが、美保さんはなかなか対面の時間をとろうとしない。まだなんら決着はついていないのだ。もちろん、恭子さんとの再会も知らせてはいけない。内緒ごとが増えていく。嘘をつけば当然、そういうことになる。
「生活の軸は麻紀子だけど、今はもう心身共に恭子に傾いています。恭子は忙しいので、僕は基本的に連絡待ち。麻紀子は疑いながらも、その疑惑を口には出しません。彼女はほんと、無言で圧をかけてくるタイプなんですよね。妻より怖いかもしれない」
怖いと思うと気持ちが少しずつ離れていくと亮一郎さんは言う。だが今のところ、生活は麻紀子さんとしながら、たまに自宅に戻って子どもたちに会っている。心の軸は恭子さんのもとにある。
なんとも複雑な生活を送りながらも、なぜか亮一郎さんはニヤニヤしている。恭子さんのことを思うだけでうれしくなるそうだ。
「煮ても焼いても食えない男」
そんな言葉が脳裏に浮かんだ。煮ても焼いても食えないからこそ、しっかり者の女性たちが執着してしまう。そんなタイプの男性なのかもしれない。本人自身が、「僕がしっかりしなければと思うのだけど、その思いがことごとくうまくいかない」と苦笑していた。
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結局、亮一郎さんの妻は離婚を決断した。「出ていくなら家はもらう、ローンはひとりで払え、養育料は月10万」という主張がどう落ち着くのか定かではないが、亮一郎さんにとって決して安くはない代償が待ち受けていることになりそうだ。
それだけではない。
「微々たるもの」とはいうものの、麻紀子さんに渡している生活費がまずある。恭子さんに心が傾いたいま、亮一郎さんにしてみれば、恋に燃えていたかつてのように喜んで差し出す金銭ではなくなっているはずだ。
また亮一郎さんの夫婦関係は、彼と麻紀子さんとの浮気が原因で破綻したといえる。その場合は妻から麻紀子さんへの慰謝料の請求もありえる。麻紀子さんにだけ支払わせるというわけにはいかないだろう。
さらに、恭子さんには家庭がある。仮に彼女の夫に関係がばれた場合には、亮一郎さんは夫から慰謝料が請求される ことだってありえるのだ。
亮一郎さんの三重生活は、金銭面でも、危ういバランスの上で今のところは成り立っているといえる。
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