45歳男性が送る、2人の不倫相手と崩壊した家庭の「三重生活」 そこで浮上する重大な金銭問題

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離婚届を差し出すと、妻は

 彼の40歳の誕生日、妻と9歳と6歳になった子どもたちが祝ってくれた。買ってきたお寿司と妻の母が作ったらしい煮物がテーブルの上にあった。ケーキは妻が予約し、上の子が引き取ってきてくれたそうだ。

「相変わらず妻の母は出入りしていましたが、僕とは会わないようにしていましたね。料理を作ってくれるのはありがたいんだけど、味が今ひとつ。そういうことも長い期間に及ぶと、じわじわと不快になっていく。それでも誕生日を祝おうという妻の気持ちはありがたかったから、その日はつとめて笑顔を保ちました」

 子どもたちが寝静まったあと、彼は妻に「ありがとう」とお礼を言った。妻は「プレゼントを買い損なったの。何かほしいものある?」と尋ねてきた。

「これにサインしてくれたらうれしいんだけど」

 彼は離婚届を出した。妻は一瞥して、大きなため息をついた。

「やっぱり誰かいるのね。最近、おかしいと思ってたと。自分では以前と同じように振る舞っているつもりだったけど、はたから見たらやはり挙動不審だったようです。好きな人がいるのかと聞かれて頷きました。浮気で終わる予定はないのかと、妻はさらに尋ねてくる。『いや、最初で最後の恋だと思う』と言ったら、『ふうん』と。でも妻は、そのまま寝てしまったんです。話し合いにもならなかった。僕が本気だと思わなかったのか、僕の言うことなどどうでもいいと思っていたのかわかりませんが」

 いつの間にか、家庭は妻と子どもたちだけで完結しているような気がしてならなかったと亮一郎さんは言う。自分がいてもいなくても、この3人のありようは変わらないのではないか。父親たちが陥る「家庭に居場所がない」という落とし穴なのかもしれない。美保さんは、子どもたちにとって母であり父であった。日常的には、美保さんの母が家庭の中で大きな存在になってもいた。彼だけが存在感を示せないまま、家庭という枠からこぼれ落ちてしまった。彼自身はそう感じていた。

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