五輪汚職「高橋治之容疑者」の実弟は資産1兆円のバブル紳士 棺の中に“あんぱん4つ”の哀しさ

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 東京五輪を巡る汚職事件で一躍、渦中の人となった大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)。スポーツビジネス界に隠然たる影響力を誇った“フィクサー”に対し、東京地検特捜部は追及の手を緩めず、紳士服のAOKIホールディングスに加え、出版大手のKADOKAWAや広告代理店・大広が絡んだ贈収賄疑惑まで浮上している。世田谷に豪邸を構え、外出にはマイバッハを使う金満ぶりは知られたところだが、そんな高橋容疑者を凌駕する大富豪として、バブル期に名を馳せたのが彼の弟・高橋治則氏だった。リゾート開発で財を成し、一時は“1兆円の資産を持つ男”と称されながら、バブル崩壊後に背任容疑で逮捕された治則氏。輝かしい栄光からの転落劇は、まさに兄の置かれた現状を彷彿とさせる。
(本記事は「週刊新潮 別冊〈昭和とバブルの影法師〉2017年8月30日号」に掲載された内容を転載したものです)

 ひょうひょうとした表情のその男は、自家用ジェットで世界の一等地を巡り、ホテルやリゾート施設を次々と手中に収めた。

 映画「プリティ・ウーマン」の舞台になったリージェント・ビバリー・ウィルシャーホテルをはじめ、ニューヨーク5番街至近のリージェント・ニューヨーク、リージェント・ミラノ、リゾート地では、オーストラリア、ゴールドコーストのサンクチュアリーコーブ、サイパン、フィジー、タヒチなどのリゾートホテル、賃貸ビルでは、香港のボンドセンター(現リッポーセンター)やロンドン、シドニーにも投資。教育にも力を入れ、オーストラリアにボンド大学を設立したりした。

 どれも投資額が数十億円から数百億円の物件。

 ついた称号が、“1兆円の資産を持つ男”“環太平洋のリゾート王”。イ・アイ・イ・インターナショナル(以下、イ社)社長、高橋治則である。同社で海外事業部長を務めたA氏が回想する。

「社長は月の3分の1は海外でした。ピークの1987年から90年までは、毎月100億円を動かしていました。世界に最大24のホテルも持ち、土地を取得し建設予定のパリなどを含めると7割近くは五つ星でした」

 イ社のメインバンクは日本長期信用銀行(長銀)。結果的に同社の運命を翻弄するのだが、これは高橋の出自と無関係ではない。

 高橋は45年、長崎県平戸で2人兄弟の次男として生まれた。イ社の元役員B氏はこう明かす。

「高橋の母親の叔父が、元長銀頭取の浜口巌根氏の妹と結婚していたのです。しかも巌根氏はライオン宰相の異名をとった浜口雄幸元首相の子息でした」

 高橋の父親は、電子部品輸入商社イ・アイ・イの社長であった。何不自由なく育った治則は慶應幼稚舎から慶應義塾大学を経て、日本航空に入社。8年後に退社し、雑貨輸入会社を経て、イ・アイ・イに入社。83年、38歳のとき、社長になる。

 旧知のB氏は当時、高橋から一緒に仕事しようと便箋20枚の手紙で口説かれた。

“僕は5千億円を動かす事業家になりたい”と。

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