カスハラの7割以上が男性、年代は中高年が大半 コロナ禍で急増した原因は?

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 社会問題化している「カスタマーハラスメント」被害が、コロナ禍とSNSの隆盛でより広がっているという。背景には「お・も・て・な・し」文化に代表される「お客様中心主義」の過剰な追求が。お客様は本当に神様か? ライター・橋本愛喜氏がレポートする。

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 国民的歌手、三波春夫が生前残した言葉、「お客様は神様です」。この言葉、「お客様は神様だから徹底的に大事にしなさい。我慢して尽くしなさい」という、サービス業のイロハともいうべき意味に解釈されているが、当の三波自身の本意はそれとは全く違った点にあったのはご存じだろうか。

 彼の意図したところは、「神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心で歌う」という志を示したものだったが、この「おもてなし大国」において、それが「神である客は何をしても許される」と曲解されてしまったのだ。

 日本の、自らをへりくだることで人に敬意を表す文化的土壌は、客と店員の間にある上下関係に見事にマッチし、世界でもまれに見る顧客至上主義を生み出した。日本の「お・も・て・な・し」精神は世界に冠たる文化といわれている。しかし、スマイルを0円で売り、無料でもない送料を無料と言って客にお得感を演出する。こうして労働者を度外視しながら顧客満足度を追求した結果、立場の優位性を盾に悪質な要求や理不尽なクレームをつける顧客や取引先が急増。「カスタマーハラスメント」、通称「カスハラ」として、昨今社会問題化しているのもまた事実である。

「ライスの量が数グラム違う」と説教

 2020年、流通・製造業や小売業など、さまざまな業種の労組で組織される労働組合「UAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)」が行った大規模なアンケートでは、2年以内に客からの迷惑行為に遭ったサービス業従事者の割合は、56.7%と半数を上回る結果に。また、この2年で迷惑行為が増えていると感じている人は46.5%と、こちらも半数近くに及んだ。実際、同アンケートには、

「レジ袋有料化に納得されず、購入されたパンをちぎって投げつけられた」(食品販売系)

「ライスの量が数グラム違うと言われ、長々と説教。全商品をキャンセルされた」(レストラン)

「保険証を持参していなかったので10割負担になる旨をご案内したら、“こっちは医師から言われて診察と検査に来ている。10割負担になるなら検査なんかしなかった。金は払わない。交通費もよこせ”と大声と威圧的な態度で“口撃”された」(病院受付)

 といったケースが報告されている。

 あるいは、

「半額シールが付いたお弁当を客が過失で落とし販売不可能な状態になったが、他の商品を半額にしろと要求。再度、商品を落として“これを売れ!”と店内で騒ぎ続けた」(スーパー)

「洋服のお直しをして、来店を待つが来ず、半年経ったので許可を得て配送した。しかし、手元に届き試着して“キツイ。入らない”とクレーム。“太って着られなくなった服は要らない!”と電話で怒鳴り散らし返金を求められた」(百貨店)

 という例も。

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