事務所退所で「SNS」閉鎖を迫られるタレントたち アカウントは誰のものか?弁護士に聞いた

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 いまやタレント活動には欠かせなくなったTwitter、インスタグラム、TikTokなどのSNS。そのフォロワー数によってメディア出演や広告の仕事が決まることもあり、タレントにとっては欠かせないツールだ。

 一方で、タレントが事務所から退所をするのを機にSNSアカウントを閉鎖すると宣言することがよくある。芸能界から離れるのであれば閉鎖もわかるのだが、実際はその後もフリーランスで活動、または別事務所に移籍し、改めてSNSアカウントを立ち上げる場合が多い。

 なぜ、タレントたちはこんな二度手間をしているのか。実は事務所を退所する際、アカウントを閉じるよう迫られるケースが少なくないのだ。【徳重龍徳/ライター】

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 筆者が、「事務所を辞める際に閉鎖を迫られた方はいますか?」とSNS上で呼びかけると、数十人のタレントからDMが届いた。現在はフォロワー数によって、オーディションに呼ばれるかが決まることもあるため、タレントにとってSNS閉鎖は死活問題。泣く泣くアカウントを閉じたという人や、新しくアカウントを作ったが以前のフォロワー数に届かないと嘆く人もいた。

 5枚以上のDVDをリリースしているグラビアアイドルのAさんも、事務所を辞める際にアカウントを閉じるよう迫られた一人だ。

 彼女には事務所の方針に不安を感じ退所を申し出るも、事務所はそれを認めず、思い悩んだ末に鬱病になってしまったという経緯がある。やっと今年に入り、事務所側もAさんの退所をしぶしぶ認めたが、契約解除の合意書にはすべてのSNSを閉じるよう書いてあった。

「SNSの閉鎖以外にも、芸能活動を3年間行わないよう書いてありました。私に芸能活動を続けさせたくなかったんだと思います。もともとアカウントは事務所に入ってから『新しく作って』と言われ立ち上げました。ただ事務所管理といいながら、実際の投稿などはすべて私がしていました」(Aさん)

 Aさんはこの解除合意書を渡されると、弁護士にすぐに相談。すると事務所側は態度を一変させ、制約のない形での退所を認めたという。Aさんによれば「私以外にも、事務所を辞める子は基本的にSNSを閉鎖するように言われる」そうで、実際に退所の際にアカウントを閉じたグラドルが数多くいるという。

アカウントをリサイクル、女子アナも“被害”に

 アイドルグループに所属していた人気メンバーのBさんは、事務所を辞める際に10万人フォロワーがいたTwitterのアカウントを消すことになった。

「アカウントは事務所に言われてから立ち上げて、事務所のものとして扱われていました。事務所がフォロワーを業者に買って水増しもしていましたし、これまで何人もの卒業メンバーがアカウントを閉じていたので、そういうものだと思い受け渡しました」(Bさん)

 Bさんの話で驚いたのは、そのアカウントの行方だ。ただ閉鎖するだけでなく「基本的にはツイートを全消しし、IDを変えて現役の新人メンバーのアカウントに“転生”されていました」とリサイクルされていたという。

 辞める際にアカウントの閉鎖を迫られるのは、いわゆる芸能人だけではない。以前、地方テレビ局でアナウンサーをしていたCさんも退社の際、局員時代に立ち上げたインスタグラムのアカウントを閉じるよう上司に言われたという。

「個人アカウントを立ち上げるのに必要だったので、会社へ申請書を出し始めました。申請書には退社の際にSNSをどうするか記述はなかったのですが、私が退社すると『フォロワーも局の資産』『もし乗っ取りがあったら会社の名誉毀損になる』と言われ、強制的に辞めさせられました」(Cさん)

 Cさんはアナウンサー時代、サンタ服やセーラー服のコスプレを仕事でさせられており「そうした部分で私をタレントのように扱っていたのに、いざ辞めるとなると『SNSは会社の資産』と言い張られたことは全く納得いっていません」と憤りを隠さない。

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