京都大学野球部を“闘う集団”へ…元プロの監督が「優勝する」と唱え続ける深い理由

スポーツ 野球

  • ブックマーク

興味のないことをやらせても苦になる

 データ分析だけを行う専属スタッフは、その三原を入れて3人。三原は自チームの投手、野手担当は自チームの打者のデータをすべて集めて分析する。

 守備担当のスタッフは、近田に「高校時代、守備が得意だったので、守備に関して調べたい」と希望して入部したという。ただ、近田に「どういうデータを集めたらいいのかは分からないです」と正直に打ち明けたという。

 近田がまず尋ねたのは「動画を見るのは苦にならないか?」。そこで「大丈夫です」の返答を受けると、近田は課題を出した。リーグ戦に登板した京大の投手が打たれた、その打球方向をすべて出すというものだ。

「分かりました」というと、その3日後には近田に全データを送信してきたという。そのデータをもとに、近田は守備シフトを考案したのだという。

「興味のないことをやらせても苦になるんです。そのデータを出してくれたら、例えばこの左バッターはセカンドへの打球が多いから、じゃあウチは、このピッチャーのとこはこういうポジショニングをしようと。こういうデータを『彼が出してくれたので』と全員に発信したら、やっぱり嬉しいじゃないですか。そういう出し方、持っていき方は、常に意識していますね。基本的にはみんな、データとか数字とか好きなんで」

15盗塁をマーク

 チームが勝つために――。その共通した大目標のために、それぞれが動いていく。

 今春のリーグで、京大は15盗塁をマークした。これも00年春と並ぶ、京大歴代最高記録タイの数字だ。非力だから、長打が少ない。他大学の長打力に対抗するために、こちらは機動力を生かして、その弱点をカバーしていく。

 そのために走塁練習を増やし、試合では思い切って盗塁を仕掛ける。それは選手側からの提案で、近田も「全然、やりなさい」と背中を押す。

 ランナーコーチは試合中、常に相手投手のモーションをストップウオッチで測定。クイックモーションの速さやクセを見抜き、盗塁の際に生かせるデータも集積していく。

「その代わり、ミスしても言い訳するなと。自分らが言って決めたことだから、自分らも責任を持ってやり切りなさい。その代わり、僕は盗塁失敗を絶対に怒らない。そこは監督として、ちゃんと君たちの意見を守っているからこそだから、盗塁できなくて勝てなかったから、あれがダメだったというのは、自己否定にもなりますから」

次ページ:電車の車掌として乗務した過去も

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。