京都大学野球部はなぜ強くなったのか? 元ソフトバンクの近田怜王監督が明かす“変革の秘密”
「あ、そういうことなんだ」
その時に、どうしても『不足』しているのが、負けることが許されないようなシビアな実戦経験なのだという。
「京大生は、シミュレーションとかが好きですごくやるんです。実際の場面を言って、そこに落とし込んで想像させる。シミュレーションって、いい意味で、ちょっと誇張するということなんですね。それでもやろう、挑戦するっていうのは、そういうことなんですけどね。結局、守備隊形にしても、これは前進守備だ、これは後ろだと言うんですが、じゃあ、なんで、前進なの? 後ろなの? と言ったときに、前進したら守備範囲が狭くなって、点を取られる可能性は高くなる。じゃあ、後ろで、って言うんですけど、それって、1点取られても、まずこのアウトを取った方が、後々プラスになるから後ろなのか、それとも、どうしても点を取られたくない、これで負けが決定してしまう、向こうに勢いを渡してしまうのがイヤだからという“マイナス思考”からの後ろなのか、というところまで聞くと、結局“マイナス思考”なんですよ」
そこに、近田の豊富な経験から出て来るエキスを注入してやるのだ。
「僕らのように、甲子園とかプロに行ったという人間の経験値として、そこは『このイニングのそこで守りに入ったら、絶対に乗り越えられへん』と。ここは絶対に守るところ、イケイケ、勢いでいくところじゃないといった、そういう方向性を示してあげるんです」
そうすると、選手たちは聞く耳を持つ。
「自分らになかった発想で『あ、そういうことなんだ』と。結局、僕が監督になったのも自分たちが勝ちたいからなんです。でも、自分たちだけでは勝てないから僕が来ている。勝つっていうのは、そういうところだよという言葉の使い方をすると、彼らも『あ、そうだ』ってなりますね」
そのための大前提が『優勝』なのだという。(後編へ続く)
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